ハリー・ポッターと賢者の石|20年経って、ある疑問を解決してみる

ハリー・ポッターと賢者の石

子どもでも楽しめる映画は、いい。

何がいいって、子どもが理解できるように、親切丁寧に創られているからだ。

ほとんどの場合、頭を悩ませながら鑑賞することはないし、ネットに上げられている解説記事を読み漁ることはない。

『ハリー・ポッターと賢者の石』が公開されて20周年を迎える節目の年に改めて鑑賞した。

疑問が出るわ出るわ。

いつもならサラッと流して鑑賞しているシーンでも「なぜ?」が止まらない。

そこで、鑑賞中に感じた疑問を1つ1つ解決していきたいと思います。

この記事はネタバレを含みますので、ご注意ください。

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【疑問①】ドリス・クロックフォードは何者か?

映画の序盤で、気になる名前が登場します。

ハリーはハグリッドに連れられてダイアゴン横丁への入り口になっているロンドンのパブ、「濡れ鍋」を訪れる。ハリーの名前を耳にしたパブの客は一斉にざわざわし始め、灰色の髪の魔女がハリーに話しかける。

それが、「ドリス・クロックフォード」。フルネームで自己紹介して、ハリーと出会えたことに感謝する女性です。

いったい誰?

なんでわざわざフルネームで名前を出している?

フルネームを出したのは何かの伏線で、この人は物語の重要な役割を果たす人物?いや違う。

「ドリス・クロックフォード」 は後にも先にもシリーズ内で、このシーンしか出てこない。

出演時間は5秒である。

じゃあ何で?特に意味のないシーン?いや、そんなことはない。映画にムダなシーンなど1つもない…はず。

日本語のどのサイトを見てもドリス・クロックフォードについて調べているサイトがなかったので、英語サイトで調査しました。

すると、ドリス・クロックフォードは実際の人物であることが判明。

彼女は作家で、1937年に『The Flying Scotsman』という絵本を出版しています。

フライング・スコッツマン(Flying Scotsman)とは、イギリスのロンドンとエディンバラを結ぶ急行列車の愛称です。急行列車がほとんど走っていなかった当時、フライング・スコッツマンはその名の通り猛スピードで運行し、人を「空飛ぶ(Flying)スコットランド人(Scotsman)」にしたのでしょう。

絵本ではキングス・クロス駅が登場し、空飛ぶ列車で魔法の冒険へと出発します。ハリー・ポッターと同じです。

J・K・ローリングはドリス・クロックフォードに敬意を表して彼女の名前を使い、序盤で彼女の名前を使ったキャラクターを登場させたのではないかと思います。

そして映画の脚本を書いたスティーヴ・クローヴスも原作に倣いドリスの名前を脚本に残し、監督のクリス・コロンバスもこのシーンを削除しなかったことから、一連の経緯を知っていたのではないかと想像します。

最後に、映画で「ドリス・クロックフォード」を登場させたからには、空飛ぶ列車と魔法のような冒険が出てこなくてはいけません。

劇作家のチェーホフの言葉に「物語の中に拳銃が出てきたら、それは発砲されるべき」という言葉があります。

言葉通り、映画に登場します。空を飛ぶ列車と魔法の冒険がハリーを待っています

【疑問②】カエルチョコ登場のシーンにて

もう一つの疑問は、ロンが言ったセリフとその日本語字幕についてです。

シーンはホグワーツ行きの列車内での一幕。

ハリーは車内販売で売られているお菓子を一通り買い、ロンと一緒に開封していく。その中の1つに「カエル・チョコレート」と呼ばれるカエルの形をした動くチョコレートが出てくる。ハリーが箱を開けた途端、すぐさまカエルチョコがぴょんとジャンプして窓ガラスに張り付き、窓の隙間から外へ逃げる。

チョコを食べる機会を失ったハリーに対して、ロンはこんなセリフを言う。

Ron: Oh, that’s rotten luck. They’ve only got one good jump in them to begin with.
(あんなに跳べるのは1匹だけなんだ)

ハリー・ポッターと賢者の石

原文を解釈する前に、先に日本語字幕だけを考察してみます。

「あんなに跳べるのは1匹だけなんだ」
⇒ 跳躍力No.1のカエルに出会えたのなら、ハリーは非常にラッキー、ついている印象を受けます。

では原文の解釈に移ります。

● Oh, that’s rotten luck.
⇒「ああ ついてないね!」
– rottenは「腐った」「ひどい」という意味を持つ単語です。

● They’ve only got one good jump in them to begin with.
⇒「カエルチョコは一度だけいいジャンプができるんだ、そもそもね 」
– theyは「カエルチョコ」を指しています。
– have gotは、現在完了形ではなくイギリス英語でhaveと同じ意味で使われる表現です。
つまり、They have only one good jump in them.に代替可能で、現在形ということになります。
現在形なので「カエルチョコは(習慣的に)、1度だけいいジャンプをするものだ」という意味。
– to begin withは「まず初めに、第一に」という意味のフレーズです。通常は文頭に持ってくる前置き表現ですが、大事な前置き(カエルはいいジャンプするよ)を言いそびれていたため、文末に持ってきていると思われます。

以上を踏まえて、字数制限なしで和訳すると
「あ~あ、ついてないね!カエルチョコは一度だけいいジャンプができるんだ、(言い忘れてたけど)そもそもね」

そもそも、なぜ脚本家はロンにこのセリフを言わせたのでしょうか?

ロンは、カエルチョコのおまけに付いているカードを500枚も集めているコレクターです。コレクターであり、カエルチョコマスターなのです。

そんな彼の隣には、カエルチョコ初体験のハリーがいます。

カエルチョコマスター兼、百味ビーンズマスター兼、お菓子マスターのロン・ウィーズリー様は、魔法のお菓子初心者ハリーを前にして黙っていられないのです。

ハリーにあれこれを教えてあげたい気持ちや知識をひけらかしたい気持ちがあるんです。
「いいかいハリー?百味ビーンズっていうのはだね…カエルチョコっていうのはだね…それでね…」
議題にあげたセリフをロンに言わせる理由は、そんなロンの気持ちを前面に出すためだと思います。

字幕はたしかに原文の意味から離れていてカエルチョコ並みの跳躍力がありますが、非難するつもりは毛頭ないです。

字幕翻訳者様のみならず色んな大人たちが目を通して、字数制限やいろいろなルールがある中、この字幕になったのだと思います。

原文の意味から離れていますが、少なくとも「ハリーに知識をひけらかしたい!」と思っているロンのセリフのニュアンスは字幕に出ているのではないかと思います。

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【疑問③】スネイプ先生の最初の授業でハリーが書いていたもの

スネイプ先生の初めての授業で、みんなが顔をあげている中、ハリーだけが必死にノートに向かって何か書いています。

自分の演説中、顔も上げずに必死にノートに何か書いているハリーに気づいたスネイプ先生は、ハリーいびりを始めて、難しい質問をします。

この時、ハリーは何を書いていたのでしょうか?

じつは、ハリーはスネイプ先生の演説の内容をメモしていたのです。

他の生徒がボーっと先生の話を聞いているのに対し、ハリーだけが先生のありがたい言葉を書き留めていたのです。

これは、よくよく見ないと気づかないポイントです。

一瞬しか映らないので、ハリーは先生の話を聞かない傲慢な奴だと、スネイプ先生と同じ印象を受けてしまいかねませんが、実際はそうでないのです!

ノートの中身は、先生の言葉のキーワードを抜き出して、こう書かれています。

Bewitch the mind (人の心を操り)
Ensnare the senses (感覚を惑わせ)
Bottle fume (名声に瓶に詰め)
Brew glory (栄光を醸造し)
Put a stopper in (death) (死に蓋をする)

ハリー・ポッターと賢者の石

ハリーは傲慢な生徒ではなく、実直でまじめな生徒であることが分かるシーンでした。

最後に

次の記事では、セリフや字幕に関して深掘りしてみたいと思います。

お楽しみに!

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