『インクレディブル・ファミリー』脚本と字幕と英語を分析 Part 1

インクレディブルファミリー

映画『インクレディブル・ファミリー』は内容が面白いだけでなく、脚本(英語表現)と字幕(日本語表現)から学べることが多いと感じたので、シリーズ化していくつか取り上げていたいと思います。

まだ観たことがないという方は、『インクレディブル・ファミリー』の紹介記事を読んでぜひ映画を観てください。

この記事で分析するトピックはこちらです。

この記事で学べること

・脚本のココがすごい!キラリと光る脚本
・字幕のココがすごい!言い得て妙の字幕
・字幕のココが気になった!
・意味が深いぞ!心に刺さった名ゼリフ

セリフは批評及び研究の目的で引用させていただきました。
日本語は、稲田嵯裕里さんが手掛けた字幕を使用しています。

キラリと光る脚本

Underminer: I am always beneath you, but nothing is beneath me!
(地面の下に住んでるが悪にかけては…)

Incredibles 2

●モグラのような敵、アンダーマイナーの登場シーンでの一言。

“beneath”の2つの意味が込められていて、惚れ惚れする脚本です。

文字通りに訳せば「俺様はいつもお前たちの下で暮らしているが、俺様よりも下には何もない」ですが、後半の部分には一歩踏み込んだニュアンスが込められています。

じつは、beneathは「~の下に」という意味以外に「(人にとって)ふさわしくない、値しない」という意味があります。

例) I think this work is beneath me.
(その仕事は私にふさわしくないと思う)

今回のセリフでは、文頭にnothingが付いているので、「私にふさわしくないものは何もない」⇒「俺様が一番の適任者、俺以上の悪者はいない」という意味です。

Tommy: Excuse me! Mr…Zone?
(待って フロゾンさん)

Incredibles 2

●実業家ウィンストンの運転手をしているトミーが、フロゾンに話しかけるセリフ。

字幕では伝わりづらいですが、原文では「ゾンさん?」と言っています。

フロゾンに敬意を示すとはいえ、「フロゾン」で1つのヒーロー名をそこで分けるの?!と驚きました。ユニークのセンスを感じるセリフです。

言い得て妙の字幕

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Violet: you little maggoty creep!
(ずるい!)

Incredibles 2

●1人は街の人の誘導、もう1人はジャック・ジャックの子守りをするよう両親に頼まれた姉弟。「僕が誘導するね」と言って持ち前の足の速さですぐにその場を離れる弟ダッシュに対して、姉ヴァイオレットが放ったセリフ。

一言で、弟への悪口です。

「私だって子守りよりも人助けがしたいのに!」というニュアンスが込められています。

maggotyは「ウジ虫のわいた」「気まぐれな」、creepは「気味が悪い」という意味。

字幕は一瞬で消えるほどの短い尺なので、スッキリさっぱりと、かつ、的確にヴァイオレットの心情が表れています。

しかも、原文をそのまま使うときつい暴言になりかねません。

原文に沿って弟の悪口を言うのではなく、弟のアクションに対する自分の感想に変えてある点が、職人技だと感じました。

Underminer: Oh, great! Now, he’s on the agenda.
(邪魔するな しつこい奴だぜ)

Incredibles 2

●銀行強盗を止めようとするMr.インクレディブルに対して、アンダーマイナ―が放ったセリフ。

原文を訳すというより、ニュアンスを訳した言い得て妙の字幕です!

agendaの意味は「課題、議題」「予定、スケジュール」で、he’s on the agenda.を直訳すると「彼が議題にのぼる⇒彼と対峙しなくては」という意味になります。
(on “my” agendaではなく、on “the” agendaになっているのは謎です。分かる方がいらっしゃいましたら、教えてください。)

「しつこい奴だぜ」の日本語には「やりたくない面倒なアジェンダだけど、対応しなくてはけない」というニュアンスが込められいて、素晴らしい言葉選びだと思います。

ココが気になる字幕

字幕翻訳者様および字幕を批判および攻撃する意図はありません。字幕翻訳者様を尊敬しております。このパートは、原文のニュアンスをより表した字幕がないか思考するためのものです。

Tony: No, they’d only think I was hiding something. You know what I mean?
(いいえ 変に勘ぐられるから)

Incredibles 2

●ヴァイオレットがスーパーヒーローである事実を知ったトニー。記憶の消去を担当するリックの尋問を受けているシーン。「誰かに話した?親には?」と質問するリックに対して、トニーが答えたセリフ。

原文通り訳すと、「いいえ。どこかに隠れてたとだけ親は思ってる。言ってること分かるよね?」

字数制限があるため字幕はまとめられていますが、この字幕が出た時、私は一瞬考えてしまいました。

気になる箇所は2つです。

①「誰かに話した?親には?」という質問に対して、「いいえ」の回答
「話しましたか?」という質問に対しては「話してない」「誰にも」の方が自然な日本語かなと思います。原文の”No”というセリフに引っ張られているように感じました。

②「変に勘ぐられる」のモヤモヤ
原文でトニーは「どこかに隠れてたとだけ親は思ってる」と言っています。
このセリフの背景に、トニーは家に帰ってこういうやりとりを親としたのではないかと思います。

勝手に妄想劇

トニー両親:おかえり!アンダーマイナ―が街で暴れてたけど、あんた大丈夫やった?
トニー:……まあ大丈夫!隠れてたからさ!
(じつはスーパーヒーローに会ってその正体が同級生やったよ!というのを堪えて)
トニー両親:それならよかった!

原文に戻ると、大事なポイントは「You know what I mean?(言ってること分かるよね?)」。

「言ってること分かるよね?」は、「両親にも誰にもヴァイオレットのことは話さず、うまく取り繕ったよ」という意味が込められているのではないかと思います。

おこがましくも勝手に代案を考えるなら…「話してない 上手くごまかした」。

心に刺さる名言

Rick: You want out of the hole? First, you gotta put down the shovel.
(おとなしくしてりゃ こんなハメにならん)

Incredibles 2

●戦いで街を破壊したため事情聴取を受けた一家。一家の世話役、リックがMr.インクレディブルことボブに言うセリフ。

直訳: 苦境の穴から脱出したい?まず、シャベルを下ろせ。

非常に哲学めいたセリフです。

自分で掘っている穴から抜け出したいなら、今すぐシャベルを下ろして掘るのを止めろ。
⇒苦境から抜け出したいなら、がむしゃらにあがくな、ということです。

字幕では相手を非難するような印象を受けますが、原文では相手を正しい方向に導こうと諭すような表現です。

さいごに

この記事Part 1では、「冒頭のアンダーマイナ―との闘い~街を破壊して事情聴取を受けるまで」のセリフを取り上げました。

まだまだ紹介したい日本語表現と英語表現があるので、次回の記事も読んでくださると幸いです。

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