『インクレディブル・ファミリー』脚本と英語と字幕を分析 Part 4

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インクレディブルファミリー

映画『インクレディブル・ファミリー』は内容が面白いだけでなく、脚本(英語表現)と字幕(日本語表現)も面白い!

そう感じたので、シリーズ化してセリフをいくつか取り上げてたいと思います。

今回はそのPart 4です!
取り上げるシーンは「暴走列車を止めた後の影響~ボブが育児に限界を感じるところ」までです。

まだ観たことがないという方は、『インクレディブル・ファミリー』の紹介記事を読んでぜひ映画を観てください。

この記事で分析するトピックはこちらです。

この記事で学べること

・チョコに包まれた中身はなに?本作で伝えたいこと
・字幕では消えてるけど、ブラックジョーク炸裂のセリフ
・ニュアンスを訳す職人技!言い得て妙の字幕

セリフは批評及び研究の目的で引用させていただきました。
日本語は、稲田嵯裕里さんが手掛けた字幕を使用しています。

本作で本当に伝えたいことは?

Reporter:A new report out today shows that,when it comesto decision-makingpeople have more trust in a monkeythrowing darts than Congress.
(議会で政策を決めるよりサルのダーツ投げで決めたほうが…)

Incredibles 2

●送迎車に乗っているイラスティガール。車のラジオから流れているレポーターのセリフ。

1度目の鑑賞では気づきませんでしたが、この何気ないシーンに痛烈な皮肉と政府批判が込められています。

リアルな世界の議会の無能さに対するメッセージを、映画にさり気なく落とし込んでいます。

映画ではヒーロー活動が法律で禁止されています。

ヒーロー活動は悪を裁く正しい行為なのに議会の決定により違法となっているのです。

でも、それはおかしい。間違っています。

そんな法律を作る議員たちよりも、いっそのことサルのダーツ投げで政策を決めてもらった方がいいのでは?真意はそこにあると思います。

アニメーションとファミリー向け映画という甘いチョコレートでコーティングされ気づかれないように隠されていますが、そのコーティングを剥すと苦い現実が表れます。

苦い現実といえば、本編の中にもう1つ映画の視聴者を現実に戻すシーンがあります。

それは、映画中盤でスクリーンスレイヴァーががTV番組をジャックするシーン。

「お前たち傍観者はヒーローに厄介ごとを押し付けて観ているだけ。何も体験せずにソファーに座ったままスクリーンを眺めているだけ」と今映画を観ている現実の私たちへの皮肉は見ものです。

ブラックジョーク炸裂の脚本

Winston: What do you want on your tombstone? “She worried a lot”?
(心配しすぎは よくない)

Incredibles 2

●スクリーンスレイヴァーを捕まえたいと言うイラスティガール。実業家ウィンストンは「One thing I’ve learned in business? Smell the flowers.(私のモットーは“花が咲いたら香りを楽しめ”)」と言ったあとに、続けて言うセリフ。

まず、1つ前のSmell the flowers.ですが、これは次のことわざが元になっています。

Stop and smell the roses.
(立ち止まって、バラの香りを嗅げ)

これは、「時間を取って日常の喜びや美しさに感謝し楽しむ」という意味で仕事などで忙しくしている人に対して使うことわざです。

映画の話に戻ると、ウィンストンはイラスティガールに「スクリーンスレイヴァーを深追いせずに、今受けている称賛を感じろ」と言いたいのです。

そして、本題のセリフ。原文を直訳すると「君の墓石には何と掘ってほしい?“極度の心配性”?」とブラックジョークが炸裂しています。

この一連のやりとりでウィンストンは「次のことをあれこれ心配せずに、今を楽しめ」と言いたいのです。でもそのまま伝えると説教じみた言い方になるため、クッション代わりにブラックジョークを使っています。

言い得て妙の字幕

Dash: Yeah, we were caught up and now we’re doing fractions and percentages and demicels.
(今 やってるのは文数値百分率と_小水だ)

Incredibles 2

●また算数の解き方を教えてもらうために、父親のボブに質問するダッシュのセリフ。

demicelsはdecimals(少数)の言い間違いで、demicelsという単語は存在しません。

字幕では「少数」と似た発音の「小水」にしていますが、言葉のセンスを感じます。

Buyer:It’s the kind of thing you buy when you have everything else.
(この車は掘り出し物だよ)

Incredibles 2

●Mr.インクレディブルの愛車インクレディビールがいつの間にかオークションに出品され、その車を購入したバイヤーのインタビュー。

直訳すると「他のすべてを手にしている時に買うような車です」という意味です。

しかし、原文のまま訳すと長いし、回りくどい。

ここで言いたいことは、バイヤーはあらゆるものを手にしている大金持ちで、インクレディビールは市場に出回ることはなかったレアな車。

大富豪が言いそうな言葉選びと車のレア感の両方のニュアンスが字幕には表現されています。

さいごに

この記事Part 4では、脚本に込められた意味や字幕翻訳の素晴らしさを深掘りすることができました!

まだまだ紹介したい日本語表現と英語表現があるので、次回の記事も読んでくださると幸いです。

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