Adele(アデル)「Oh My God」|解釈と考察

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Adele

ショックと驚きの感情を表す表現「Oh My God」。

しかし曲を聴いていると、不思議と動揺している様子もたじろいでいる様子も感じられない。

むしろ「Oh My God」が冗談に聞こえるほど、曲調も歌い方も歌詞も堂々としている。開き直って潔ささえ感じてくる。

この曲に込められている意味や疑問を、自分なりに考察します。

歌詞の解釈

[Verse 1]

時間に余裕がない「私(I)」。

それでも、どれだけ「あなた(you)」を気にかけているか示すために、時間を割く。

時間を割いて愛情を示しているものの、自分の壁を壊すことは「あなた」に許可しない。

「現実には無理なことを願う」wishを使っている。実際には「あなた」が「私」の壁を壊すことは許可しない。願いはするが、実際には許可は出さない。

なぜか?

落ちるところまで落ちて、自分でも自分を上手くコントロールできないから。
『fallに”the”が付いている理由』で後述するとして、ここは離婚を指していると思われる。
冒頭の「時間がない」のは、「離婚」が原因だと考えると、歌詞に奥行きが出てくる。
離婚調停や別居による引っ越しなど、離婚は多くの時間を奪う。

でも、「あなた」が真っすぐでピュアで素敵な愛をくれる限り、何度でも戻ってこれる。

そんな天使のような存在の「あなた」は誰なのか?

[Pre-Chorus]

間違っていると分かっているし、自覚している。でも楽しみたい。

2つの相反する感情が「私」の中で交錯する。

「楽しむこと」とは、何を指すのか?なぜ「楽しむこと」は間違いなのか?

[Chorus]

全人類のうち、どれほどの人が「私」の人生から飛び出して「あなた」の腕の中へ飛び込むのだろうか?
噛み砕くと…→「私」の下す決断に呆れ、これまで「私」の人生に関わり応援してくれていた人たちが手のひらを返し、「あなた」に同情の目を向け抱擁する見込みはどれだけあるか。

天国と地獄の瀬戸際で、感情も思考も決断も揺れ動く。

何が正しくて、何が間違っているのか。何が天国行きで、何が地獄行きなのか。

世間からの反応やバッシングがあろうとも、気が狂っていようとも、自分の判断でしっくりきたものがが正しい。それが、「私」の下した決断である。

[Verse 2]

「目の前が見えていない」と、世間はそう「私」を揶揄するだろう。でも独り取り残されるくらいなら大馬鹿者でいるほうがまし。

そんな自分の立場を「あなた」に弁明する必要はない。なぜなら、「私」は成人した一人の女性だから。
ここの「a grown woman(大の大人)」という言葉選びが気になる。なぜ”grown”を付けているのか。まるで「あなた」が、「grown(成人)していない」ことを強調しているようにも受け取れる。

「あなた」はだあれ?

[Bridge]

プレッシャーを与えるかのごとく「神よ、私をがっかりさせないで」がこだまする。

自分の下した決断は世の中的には間違っているのかもしれないが、でもそれが一番自分にはしっくり来ている。

その決断は「地獄行き」なのか「天国行き」なのか。

【考察】「You(あなた)」は誰を指す?

歌詞は自由な解釈ができます。その抽象さや曖昧さが解釈の醍醐味です。ここでは私なりの解釈をご紹介します。

「You(あなた)」は、アデルの息子アンジェロくんを指していると判断しました。理由は、以下のとおりです。
理由①:前提として、このアルバム全体はビデオレターならぬ「息子に宛てたソングレター」であること。
理由②:[Verse 1]で「あなた」に対して「Boy」と呼びかけている。恋人に対して使う「ハニー」や「ベイビー」ではなく、あえてこの言葉を選んでいる。
※もちろん”Boy”には驚きを表す感動詞”Oh boy”としても使われますが、この使い方は主にアメリカ英語で、イギリス人のアデルがこの意味で使っているとは考えにくい。
理由③:「a grown woman(大の大人)」と「you」が対比になっている。つまり、youは大人ではない。

「あなた=息子」と考え、もう歌詞を読み直すと、このような解釈ができます。

[Verse 1]:
離婚調停で時間は割かれ頭はパニック状態だけれど、息子との時間をなんとか取ろうとするアデルの姿が浮かびます。息子からの真っ直ぐな愛情を受け、アデルは嘘をつかず正直でいようとします。

[Pre-Chorus]:
嘘をつかず正直でいようと考え抜いた結果、たどり着いた決断は「楽しむこと」。「楽しむこと」には、母親である前に一人の女性として、新たな恋愛を楽しみたいと思う願望が込められています。

[Chorus]:
離婚後、一人の女性として人生を楽しむため新恋人をつくれば、世間は騒ぎ立てます。「母親としての責任が欠けている」「子どもがかわいそう」といった同情の声が、「アンジェロ君」を抱きしめてくれます。

[Verse 2]:
アデルは、母親である前にやりたいように何でもできる成人した一人の女性です。子どもに自分の立場や言動を弁明する義理はないのです。

気になる英語表現

fallに”the”が付いている理由

「落ちること/崩壊/衰退」などを表すfallの前に定冠詞のtheが付いています。

theが付いているということは、話し手同士が了解している「あのfall」ということです。

ご存知の「あのfall」とは、つまり「離婚」のことです。離婚で頭がいっぱいで忙しいのです。

「お母さんは色々大変だから、手加減してね(Easy On Me)」と歌う『Easy On Me』と曲の根底にあるものが似ています。

参考

Do you know where the station is?
(駅はどこですか?)

外国人にこんな質問をされたら、迷わず「最寄り駅」を教えますよね。
わざわざ2~3駅遠い場所を教える人はいないはずです。話し手同士で”the station”=「最寄り駅」であることを了解しているのです。

詳しくは、名著『aとtheの底力』に載っています。冠詞の使い方・違い・ニュアンスを学びたい方は、必読書です。

ミュージックビデオの解釈

監督は誰?

「Oh My God」のMVを手掛けたのは、サム・ブラウン監督(Sam Brown)です。

アデルと監督は「Rolling in the Deep」で一度タッグを組んでいるため、両者のMVには、アデルの髪型、椅子、構図など、共通点が多くあります。

リンゴは何を指すのか?

リンゴは欲望の象徴として描かれていると解釈しました。

リンゴは、旧約聖書に出てくる理想郷、エデンの園で登場する禁断の果実です。食べてはいけないと知っていつつ、イヴはヘビにそそのかされて食べてしまいます。その結果、アダムとイヴはエデンの園から追放され死すべき定めを負ってしまいます。

エデンの園のストーリーをなぞるように、MVの中盤では椅子に絡みつくヘビが登場し、アデルはリンゴを口にします。

新しい恋愛へと舵を切り、一人の女性として欲望に身を任せることに決めたのです。

では、アデルはイヴのような悲劇が待っているのでしょうか?
「神よ、私をがっかりさせないで」
アデルはどこまでも、強気です。

椅子は何を表すのか?

椅子の目的から考えてみると、椅子は「どこかに一定時間とどまるため」に使う道具です。

また、玉座から連想されるように「地位や役職」を象徴するものとして、椅子は使われます。
「椅子に座る」は、職業上のポストに就くことを比喩的に用いられます。

MVはたくさんの椅子が登場します。これは、アデルの色々な側面を表しているのではないかと思います。
歌手としてのアデル、妻としてのアデル、母親としてのアデル…など。

MVでは、椅子の1つが燃やされます。これは、「妻としてのアデル」を捨てる=離婚を示唆しているのではないかと思います。

そしてMVの最後で、アデルは椅子から立ち上がります。

リンゴを口にして、一定時間とどまるために使われる椅子から立ち上がることで、新しい椅子=新たな恋愛に踏み出そうとしているのだと思います。

まとめ

私がこの曲で学んだ教訓は、

たとえ誰に批判されようとも、自分がしっくりくる・正しいと感じる(feels right)決断を!

です。

それが、巡り巡って結果的に周りを幸せにすることに繋がります。

子どもにとっての幸せは何でしょうか?

両親が2人ともいて、一緒に暮らしていることでしょうか?
夫婦円満ならいいですが、関係が冷え切っていたらどうでしょう?ギクシャクした関係を子どもに見せることになります。もしくは、仲のいい夫婦を子どもの前で演じなくてはいけません。仮面夫婦です。それで、子どもは喜ぶでしょうか?

アデルは「I won’t lie(ウソはつかない)」と歌っています。仮面夫婦を演じて円満を装っても、いつかは限界が来ます。第一に、アデル自身が幸せではありません。子どもの前で作り笑顔を続けることはできません。

子どもにウソをつき続けるくらいなら、離婚して自分の幸せを手に入れ子どもに本当の笑顔を見せてあげるのも一つの道です。まずは自分が幸せにならないと、子どもを含めて他人を幸せにすることなどできません。

母親の隣にいる人が父親ではない誰かになってしまうことは、子どもからしたらショックだと思います。それでも、アデルが一人の女性として幸せであり、その幸せな状態で子どもに接し続ければ、いつか子どもに理解してもらえる日が来ると思います。いまは現実的に無理でも、アンジェロくんが大人になれば、アデルの壁を壊し大人同士の対話ができる日がいずれ来ると思います。

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