プロポーズなんて、結婚式なんて、しょせん通過儀礼にすぎない。それ以上に大事なものがある。
これが、この曲を考察して思ったことです。
2011年8月15日にリリースされたブルーノ・マーズの「Marry You」は、今現在でもプロポーズソング/ウェディングソングとして不動の人気を博しています。
しかし歌詞の意味を知って使っているのと、知らないで使っているのとでは大違い。
取り扱い要注意の一曲であることを先にお伝えしておきます。
結論をお伝えすると、この曲は「酔っぱらった勢いに身を任せて、ノリでプロポーズをする」非常に悪ノリの効いた曲です。
この記事は、以下の読者を想定して記事を書きました。
【Chorusの意味】酔った勢いでプロポーズ
歌詞冒頭は、「美しい夜」という言葉から始まりますが、その言葉がまず語り手の心情を物語っています。
どういうことかというと、周りの背景がキラキラ輝いて見えるほど、気分が高揚しているわけです。
そんなハイテンションの語り手が相手と「何かバカげたことはないか」と模索しています。
そして、いいアイデアを思いついたかのように、語り手は「君と結婚したいと思ってる」と提案します。
「ムードがない」「ロマンチックじゃない」と言われれば、その通り。
でも、こういう日常の中に突如現れる意外さや突飛さに不意を突かれて、心を奪われる人もいるのではないかと思います。
それにしても、「バカげたこと」から「結婚」を提案するとは、まともじゃないと思いませんか?
そうなんです。
勘の鋭い方はお気づきかもしれませんが、この語り手、まともじゃないんです。
酔っぱらってるんです。
“君の眼差しがそうさせるのか?”
”それともアルコール(ダンシング・ジュース)のせいなのか?”
酔っぱらった状態でプロポーズしたことを潔く伝えています。
「酔っぱらった勢いでのプロポーズ」は、アリなのかナシなのか。
意見は分かれそうですが、語り手は「構うものか」の精神です。
酔っぱらってても、構うものか。
この歌詞パートからは、語り手の勢いをものすごく感じます。
【Verse 1の意味】挙式はノリと勢いで
ノリと勢いで結婚するのに、うってつけの場所がアメリカにはあります。
ラスベガスです。
ラスベガスのあるネバダ州は、他の州に比べて婚姻手続きが簡単で、深夜でも受け付けています。
牧師さんの前での結婚式(宣誓式)もTシャツにジーンズといった格好でできます。
ドライブスルーで結婚式も挙げられます。
酔った勢いで式を挙げるにはもってこいの場所です。
歌詞には、「ラスベガス」という言葉は出てきませんが、おそらくベガスでちゃちゃっと式を挙げる気満々の様子を描いているのがヴァース1の内容です。
【Verse 2の意味】なかったことにしてもいい
結婚指輪を買ってくる気満々。
聖歌ベル隊に祝ってもらう気満々。
ヴァース2冒頭は、語り手の楽しい妄想がどんどん膨らんでいる様子が受け取れます。
ここまで語り手が一人で話を膨らましてきましたが、ここにきて「君はどうしたい?」と急に相手に話を振っています。
そして「とにかく走ろう」と唐突に言い出しました。
ここの歌詞、唐突だと思いませんでしたか?
ここに込められた行間を読んでみます。
語り手は酔った勢いでプロポーズ。
その後、チャペル行っちゃう?指輪買ってくるけど?と、終始一人で盛り上がっています。
自分は超ノリノリだけど、相手の反応が気になって気になってしょうがない。
だから、「君はどうしたい?」と急にガチトーンで思い切って聞いちゃったんでしょう。
でもここまでノリノリトーンで喋ってたのに、急にマジなトーンでストレートに尋ねちゃって、恥ずかしくなったんじゃないかなと思います。
だから相手の答えを待たずして、「ただ走ろうぜ」とぎこちない言葉で、またノリノリトーンに戻ったんじゃないかなと思います。
そこからはまた軽いノリで、「一夜明けて別れたくなっても全然オーケー」「責めないよ」「楽しかったよ」と相手に言っています。
終始チャラいキャラかと思いましたが、真面目な部分がちょっと垣間見れたようなヴァース2でした。
【考察】プロポーズや結婚式より大事なもの
語り手は、お酒の力を借りないと行動に移せない、度胸のない酔っぱらいでしょうか?
それとも、結婚とかプロポーズとか、一大イベントを大事だと思っていない、底抜けに明るい人なのでしょうか?
この語り手の行動は、すべて照れ隠しでやっているのではないかと私は思います。
お笑い芸人や監督、俳優としても活躍されているビートたけしさん。
恋愛の話を振られると、照れ隠しでふざけるそうです。
口癖の「バカヤロー」は愛情表現をストレートに表現するのが恥ずかしいから、その緩衝材。
照れ隠しです。
素直に表現するのはキャラじゃないんです。この歌詞の主人公も。
歌詞の語り手が、文字通りの意味で「バカげたこと=結婚」だと捉えているようには思えません。
ただ事前に指輪を用意して、ムードたっぷりの場でひざまずいて「Would you marry me?(結婚してください)」と言うようなキャラじゃないからだと思います。
相手をおざなりに扱っているようにも感じ取れません。
自分の隣には大好きな相手がいて、一緒になって酔っぱらって、バカやって、笑いあって。
「二人でいること」が最強で最高の瞬間。
だからこそ、プロポーズの言葉や結婚式に重きを置いていない。
一種の通過儀礼に過ぎない。
二人で一緒に「いること」が大事で、バカげたこと、結婚式を挙げること、逃げるように走ること…など、歌詞に出てくる「やること」は何でもいい。
そう私は読み解きました。
【英語解説】スラングdancing juiceの意味は?
「アルコール飲料のこと」
飲むとついつい踊りたくなるようなジュース、お酒のことです。
ブルーノはお気に入りの飲み物について聞かれたとき、「ラム酒とジンジャーエルを混ぜ合わせた、dancing juiceと呼んでるんだけど、それ」だと答えています。
半分はお酒、半分はジュースでできたdancing juiceは、どうやらブルーノが創り出した造語のようです。
歌詞では「君の眼差しに酔ってるのか、それともアルコールに酔ってるのか」という箇所に出てきます。
照れ隠し表現だと思います。
本音は「君に酔っている」と言いたいところだけど、ストレートに表現するのは恥ずかしいし、ダサい。
だから、冗談っぽく言っている感じがします。
【結論】プロポーズソング/ウェディングソング向きか否か?
意見が分かれるところかと思います。
どんな雰囲気のプロポーズや結婚式を想定しているかが主軸です。
ネイティブの人たちは、堅苦しい雰囲気を和ますために、または冗談っぽくこの曲を結婚式に入れていることもあります。
堅苦しい伝統的な披露宴よりは、カジュアル婚(1.5次会)~二次会で使う曲として使用すれば盛り上がるかもしれません。
ただ「君が別れたい(break up)と言い出しても~」といった、お祝いムードとは反対の露骨なことばが使われているのは事実です。
歌詞では酔っぱらった勢いで冗談半分で言っているとはいえ、この部分が気になる方はセットリストから外したほうがいいかもしれません。
【最後に】私が思うこの曲の魅力
この記事を読んで気落ちしている人がいたらごめんなさい。
ウエディングやプロポーズで使った思い出の一曲なら、一層のこと動揺しているかもしれません。
でも私は、この曲をウェディングソング・プロポーズソングとして全く不向きだとは捉えていません。
前述したように、この曲は大真面目にロマンチックにプロポーズできない人が、照れ隠しとして軽いノリでプロポーズしようとしているように解釈できるからです。
さまざまな解釈ができるのが、歌詞の最大の魅力です。
実際のところ、この記事でお伝えした「照れ隠し説」とは別の考え方も同時に持っています。
この曲はウェディングソングに不向きだと否定している人もいますが、大事なのは「自分が曲をどう解釈し、人生を彩るのにどう使うか」だと思います。
あなたのウェディング/プロポーズソング選びのご参考になれば幸いです。
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