Lorde -The Man with the Axe-|解説

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Lorde

「The Man with the Axe」は日本語で「斧を持った男」という意味ですが、決してホラー映画的な要素を含んだ歌詞ではありません。

じゃあどんな内容なのかって?

音楽プロデューサー、ジャスティン・ウォーレンとの恋愛を誌的に表現したラブソングです。

さっそく、英語表現を確認しながら内容を詳しくチェックしてみましょう。

歌詞の解説/英語表現

Verse 1&Chorus【解釈】2人だけの世界観へようこそ

Verse 1では、恋人の特徴と2人の心地よい関係性が綴られています。

彼の良いところはいっぱいあるけれど、「それをかみ砕いてどうしても一言で表さないといけないなら…」という前置きで始まっている歌詞は、本当は一言では言い表せない彼への愛情が表現されています。

「事務仕事」や「家具を動かす」や「暗闇に浮き出る2人の輪郭」など、当の本人たちにしかわからない具体的な内容が歌詞に盛り込まれている分、想像力を最大限に働かせて2人のプライベートを妄想させる歌詞になっています。

Verse 1【英語表現】break it downの意味は?

「かみ砕いて話す」

break downは英辞郎辞書で調べると10個ほど意味があるので、毎回文脈で判断しないといけないよう注意表現です。

今回の意味は、「分解する」や「かみ砕く」の意味がしっくりはまります。
恋人の好きなところがいっぱいある中、「もしかみ砕いて伝えなきゃならないなら…ダンス好きなところかな」と歌っています。

例) Please let me break it down for you.
(かみ砕いてお話させてください。)

※余談ですが、ニュージーランド/オーストラリア英語では、”break down”の意味とは別に”break it down”で意味があります。

break it down
Australian and New Zealand informal
a. stop it
b. don’t expect me to believe that; come off it

Collins Dictionary

a. やめろ
b. 冗談はよせ

ロードはニュージーランド出身ですが、上記の“break it down”は命令形で使われるので、今回の歌詞の意味には該当しません。

Verse 1【英語表現】my back is turnedの意味は?

「背を向ける、目を離す」

背中がクルっとターンしている状態。つまり「目を離す」を意味する表現です。

例) My kids were watching Youtube when my back was turned.
(私が目を離している隙に、子どもたちはYoutubeを観ていた)

歌詞で歌ってる「私(ロード)が目を離している隙に家具を動かしている」人物は誰でしょうか?
これは1つ前の「ダンス好きの恋人」のこと。

ここの行間を読むと、ダンスをするために家具をせっせ隅に寄せてスペースを作っている、ということです。

恋人のお茶目さがこのラインから読み取れます。

Verse 1【英単語】名詞のflickの意味とは?

「はじくこと」「軽く打つこと」「ひょいっと動かすこと」

“flick a light switch”で「灯りのスイッチをポチっとする」という意味があります。
歌詞はこれを名詞化したものです。

例) nose flick (人の鼻を指ではじく、鼻ピンのこと)

Verse 1【英語表現】falls awayの意味は?

「離れて落ちる、消え失せる」

「明かりをポチリと消すと/世界は隔離され消える」と歌っていますが、どういう意味でしょうか。

ここは世界を「2人の世界」と捉えると意味が通ります。
電気を消したら何も見えなくなります。闇です。
目が暗さに慣れてきてぼんやりと見えるのは、相手の輪郭のみ。

闇と自分たちが溶け込んで、2人しか世界に存在しないのではないかと錯覚している感覚です。
その様子がこのfall awayから感じ取れます。

Verse 2【解釈】音楽業界の苦悩

「爪の世界はお気に入りの貝殻のようだ」と歌っていますが、これは何を意味するのでしょうか?

「指の爪の世界」≒「お気に入りの貝殻」は、ロードが身を置いている音楽業界を指しているのではないかと思います。

歌手なら誰しも、自身の失恋やつらい実体験をもとにした気乗りしない楽曲を抱えているでしょう。

それでも、時には歌わなくてはいけません。

だからこそ歌詞に登場するスーツは、演奏時に着用する衣装の意味合いだけでなく、自分を守るための鎧や仮面という意味が込められているのではないかと思います。

ラフなTシャツではなく、かっちりとしたいかにも鎧のようなスーツをという言葉を選んでいるのがポイントです。

同様に、マニキュアを塗った状態の爪というのは、一種の鎧をまとった状態です。

そして、貝殻ネイルのように、音楽業界では常にキラキラして目立っていないと、自然にある本物の貝殻のようにすぐに大海原に流れてしまうのです。

マニキュアは大体の人が、夜か寝る前に時間をかけて塗ります。

しかし、いくら時間をかけて塗っても、時間が経過すれば、爪を切らねばなりません。

歌手の場合、いくら時間をかけて作曲しても、時間が経過すれば、その曲はどんどん新しい波(新人アーティストや他のアーティストの新曲)に揉まれて、海にさらわれてゆきます。

音楽業界の皮肉を「指の爪の世界」や「お気に入りの貝殻」で表現していると解釈しました。

Verse 3【解釈】キャリアを重ねても今でも変わらないもの

洋服も絵画も簡単に手に入れれるほど歌手として成功したロードですが、成功しているからと言って、元々の内向的な性格は変わっていないようです。

1stアルバムの「Bravado」では、虚勢を張って自分を奮い立たせながらステージに立っている心の内を明かしています。

ノルウェーのロイヤルファミリーの前でパニックに陥った過去の実体験もこの節に盛り込まれています。

Verse 3【英単語】fall apartの意味は?

「崩れる、バラバラになる、崩壊する」

「ノルウェー王女の前でぶっ倒れた」ことを表す箇所に出てきました。

例) I can’t watch this sappy movie because I just fall apart at the seams every time.
(気持ちがボロボロになるから、この感傷的な映画は観れない)

Chorus【解釈】自分とは正反対のあなた

自分は天才だと思い、ガウンも絵画も手にして、虚勢を張りながらパフォーマンスを行っていたロードの前に表れたのが、彼です。

鎧としてスーツを着ていた自分とは対照的に、ラフなシャツ姿の彼。

自然体で力を抜いて仕事をする彼の様子が細かく描かれているのがこの節です。

自分のこれまでの生き方とは正反対の生き方をしている人が目の前に現れたら惹かれずにはいられません。

正反対なら音楽の好みが違っててもいいところを、父親と彼の音楽の趣味が一致しており、ロードの面食らった様子が歌詞に表れています。

Verse 4【解釈】弱さに漬け込むのね

自分は歌手でありながら演奏時にパニックになるし、言いたいことも伝えられない、まるで手に負えない森林火災のよう。

でもそんな自分に、彼は優しく手を差し伸べてくれた。

弱っている自分に優しくする彼の計画的な犯行にずるいと思いながらも、完全に恋に落ちてしまっている様子がこのVerse 4で語られています。

Chorus【解釈】木こり現る

「あなたは斧で松のようにきれいに私を切り倒した」と文字通りに解釈すれば、殺人的な要素をはらんだ内容ですが、それを深い愛情表現として見せるロードのワードセンスに鳥肌が立ちます。

夏目漱石が「I love you.」を「月が綺麗ですね」と訳した話は有名ですが、それに匹敵するほどのセンスが感じられる詩です。

まとめ

この曲は、ロードが彼と出会い、恋に落ちるまでを描いた曲でした。

「あなたは私を松のようにきれいに切り倒す」を「恋に落ちる」の同義語として、辞書に加えるべきだと思います。

それほど音楽史に残る強烈なラブソングをまた1つ生み出したのです。

コメント

  1. R より:

    Solar powerが出てからアルバムをたくさん聴いていたのですが、歌詞サイトのgeniusを読み込む時間がなく困っていたところにこちらのサイトを見つけました。ことばあさんのロードへの愛を感じる素晴らしい解説と素敵な訳で、更に彼女のアルバムが大好きになりそうです。ありがとうございます!💛

    • こちらこそ、コメントを残してくださりありがとうございます!少しでもR様のお役に立てたこと、非常に幸いです。
      このアルバムを聴くと、初夏のあたたかい日差しを浴びているような心地よい気分になれるので、肌寒くなったこの時期にまた聴きなおしています。^^

      こちらの記事を含め過去の記事も、さらなる解釈や文化的背景、他アーティストとの比較など、追記予定ですので、またのご訪問を心よりお待ちしております☆
      ロードの個性あふれるワードチョイスや感性を深掘りして、彼女の魅力をこれからも発信していきたいと思います。

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