海外ドラマや映画でよく見るジェスチャー、「フィンガーズクロス(Fingers Crossed)」。
外国文化に触れたことがある人なら、人差し指と中指をクロスさせ指を十字架に見たてたジェスチャーを見たことがあるのではないかと思います。
そして、そのジェスチャーの意味を知っている人も多いのではないかと思います。
「幸運を祈る」の意味で、「グッド・ラック(Good luck)」と同じ意味合いで使われます。
例えば、以下のようなシーン。
例)
A:I have a job interview tomorrow.
(明日、面接があるんだ)
B:I’ll keep my fingers crossed for you.
(幸運を祈ってるよ)
しかし、このジェスチャーには「幸運を祈る」の意味から想像もできない、他の意味を持っています。
2022年1月5日にリリースされたLauren Spencer-Smith(ローレン・スペンサー・スミス)の「Fingers Crossed」を聞いてみてください。
「あなたが愛してると言ったとき/幸運を祈ったに違いない」
「幸運を祈る」と和訳してしまうと、論理的に考えて意味が通らなくなります。
そこで、Fingers Crossedのもう一つの意味をこの記事でご紹介します。
フィンガーズクロス(Fingers Cross)のもう1つの意味
先に結論をお伝えすると、このジェスチャーは嘘をついている場面で「その嘘を神様にノーカウントにしてもらいたくて行う嘘の帳消しサイン」としても使います。
例えば次のようなシーン。
例)
母親:Did you finish your homework?
(宿題は終わったの?)
子ども:(lying, but with fingers crossed behind my back): Yes!
(〈本当は終わっていないけど嘘をついて、母親に見えないように指を交差させ〉やったよ!)
先ほどのローレンの歌詞にこちらのニュアンスをあてはめます。
「あなたが愛してると言ったとき/その言葉は嘘だったに違いない」
「指を交差させて、嘘であることを前提で、愛してると言ったのね」
「幸運を祈る」では意味の通らなかった部分が、胸が締め付けられるほどの切ないメッセージ性を持った歌詞へと変わりました。
このニュアンスを裏付けるのが、ジャケット写真。
この曲のジャケット写真も、後ろに手を組んで右手の指をクロスさせています。
これは、彼女に見られないように後ろで手を組み、右手の指をクロスした状態で、「愛している(うそ)」を言った元恋人の手と捉えることができます。
フィンガーズクロスの宗教的背景
そもそも、なぜ「フィンガーズクロス」が「嘘をついている」ニュアンスを持つのでしょうか?
冒頭でお伝えしましたが、このジェスチャーは指を十字架に見たてたもの。
これは、キリスト教の考えが深く関係しており、聖書には次の言葉が書かれています。
互いに偽りを言ってはいけません。…
『聖書』回復訳
基本的に、嘘はよくない行為です。
だから、やってはいけないことをやってしまったときは、神に赦しを求めます。
海外ドラマや洋画で観る、悪いことをした後に教会で告解をするシーンが一例です。
「神はすべてを見ている」という考え方が根底にあるからです。
この考えは信者ではない日本人と大きく異なりますよね。
キリスト教信者ではない日本人はよく人の目を気にしますが、キリスト教信者は神の目を気にします。
今回のような嘘をつく場面で指をクロスする行為は、「どこかで神様が見ている」という考えがあってのことです。
指をクロスして十字架をつくることで、「神様。この発言は嘘です。この嘘をなかったことにしてください」と赦しを請う簡易的な告解と捉えることができます。
“幸運を祈る”と”嘘”の共通点
では、なぜ「幸運を祈る」と「嘘をついている」の、2つの異なる意味があるのでしょうか?
その理由を考察する前に、まずは二つの共通点を確認します。
二つの共通点は、『どちらも指を十字架に見たてて、神様にお願いしていること』です。
「幸運を祈る」の意味で使われるときは、(悪い結果にならないように)幸運を神に願う。
「嘘を帳消しにする」の意味で使われるときは、(罰が当たらないように)赦しを神に請う。
神様へお願いする内容は両者で大きく異なりますが、どちらも悪いことが起きないように祈っているという点で共通しています。
このように一見違う意味に思えて、ルーツをたどると同じ語感を含んでいるということは、英語で多々あります。
英単語でも、辞書を引いて複数の異なる意味が出てきたときは、その言葉の持つエッセンス/語感は何なのかを理解すると、効率的に単語を覚えられますよ。
さいごに
「Fingers Crossed(フィンガーズクロス)」の意味には、宗教的な背景が前提にあります。
言葉やジェスチャーの使う使わないは個人の自由です。
しかし、「Fingers Crossed(フィンガーズクロス)」や宗教色の強い表現の代表格「Oh My God(オーマイゴッド)」のように、ネイティブでもなく、キリスト教信者でもない人が使うには注意が必要です。
それは日本でたとえると、関西人じゃない人がエセ関西弁をしゃべって、何とも思わない人もいれば、虫唾が走るほど不快に感じる人もいる、そんな感覚に近いかもしれません。
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