『インクレディブル・ファミリー』脚本と英語と字幕を分析 Part 2

インクレディブルファミリー

映画『インクレディブル・ファミリー』は内容が面白いだけでなく、脚本(英語表現)と字幕(日本語表現)から学べることが多いと感じたので、シリーズ化していくつか取り上げていたいと思います。

今回はそのPart 2です!
取り上げるシーンは「警察から釈放された後のモーテルでの夕食シーンから~両親が外出するところ」までです。

まだ観たことがないという方は、『インクレディブル・ファミリー』の紹介記事を読んでぜひ映画を観てください。

この記事で分析するトピックはこちらです。

この記事で学べること

・日常会話に活かせる!おもしろい英語表現
・字幕のココがすごい!言い得て妙の字幕
・あなたならどう訳す?考える字幕

セリフは批評及び研究の目的で引用させていただきました。
日本語は、稲田嵯裕里さんが手掛けた字幕を使用しています。

日常会話向け!おもしろい英語表現

Violet: The elephant in the room.
(気まずくなる?)

Incredibles 2

●アンダーマイナ―を捕獲しようとして、街を破壊してしまった一家。誰もそのことに触れないので、しびれを切らしたヴァイオレットの一言。

直訳すれば「部屋に象がいる」ですが、そのままの意味ではありません。

これは慣用句で、「明らかに問題があったり難しい状況に置かれたりしているのに、そのことを話題に出さない・話さない」という意味です。

たとえば直訳どおりに部屋の中に大きな象がいるとしましょう。そんなことが実際に起きれば、誰でも気づきますよね。でも、それを口にするのは気まずい。こわい。見て見ぬふりして無視して何とかやり過ごそうという意味です。

このヴァイオレットのセリフに対し、父親のボブの返しが秀逸。

「What elephant?(なんの像?)」と聞き返しています。

とぼけています。お茶を濁しています。

娘はまじめな話をしたいのに、父親はとぼけて相手にしてくれない。この何気ない会話のやりとりから、親子の距離感が感じ取れますね。

Helen: You enjoy, I’m sitting this one out.
(私は遠慮する)

Incredibles 2

●ヒーロー活動の件で、実業家ウィンストンに会おうと勧めるルシアスに返事をするヘレンのセリフ。

sit outは「(活動に)参加しない、加わらない」「(演劇・映画などを)終わりまで見る」という意味があります。

2つの意味は異なるように思えますが、ニュアンスは同じです。

「座った(sit)ままの状態で最後まで(out)いる」なので、「最後まで鑑賞する」と「座ったまま腰を上げない⇒参加しない」の2つの表現ができるのです。

例) I have to go, but I want to sit out this movie.
(もう行かなきゃいけないけど、映画を最後まで観たい)
例) I’m sitting this one out for this time.
(今回はパスさせてもらう)

Violet: I know the drill.
(分かってる)

Incredibles 2

●両親が子どもたちを置いて、外出するシーン。もしジャック・ジャックが起きたら…と母が言い終わる前に、ヴァイオレットが被せて言うセリフ。

drillは「(穴をあける)ドリル、練習」という意味の単語ですが、このセリフのように「手順」という意味もあります。

「はいはい。私が子守りしたらいいんでしょ。分かってる、分かってる」という心情を、I know the drill.で表現しています。

言い得て妙の字幕

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Lucius: Don’t be mad because I know when to leave a party. I’m just as illegal as you guys.
(パーティは引き際が肝心/捕まるのはゴメンだ)

Incredibles 2

●街を破壊したことで一家は全員捕まったのに対し、フロゾンことルシアスは上手く逃げ切った。ボブの「どこに消えてた?楽しみを逃したな」の一言に対するルシアスのセリフ。

原文を訳すではなく、ニュアンスを訳すとはこのことを言うのか!と思わず唸ってしまう美しい字幕です。

特に素晴らしいのは、後半の一文。

直訳は「君たち同様、法に違反している」ですが、一歩踏み込んでルシアスの真意をくみ取った字幕が「捕まるのはゴメンだ」です。

気になる字幕

字幕翻訳者様および字幕を批判および攻撃する意図はありません。字幕翻訳者様を尊敬しております。このパートは、原文のニュアンスをより表した字幕がないか思考するためのものです。

Dash: It defines who I am.
(“パワーがすべて”)

Incredibles 2

●ヒーロー活動について話し合う一家。活動は良くないと言う母親に対して、ヴァイオレットが「we’ve gotta go back to “never using our powers”(またパワー禁止ってこと?)」と言い、すかさずダッシュが言うセリフ。

この後のやりとりで、このセリフがTVのセリフの引用だと分かります。
(余談ですが、台詞を引用しているので字幕にダブルクォーテーションが付いています)

全く同じセリフは見つかりませんでしたが、これは映画『バッドマン ビギンズ』の引用のようです。

It’s not who I am underneath, but what I do that defines me.
(拙訳: 私が何者であるかを決めるのは、マスクの下(内面)が誰かではなく何をするか(行動)である)

Batman: Begins

ダッシュのセリフは、家族が話し合っている問題の核心を突いています
たとえ法律で禁止されていようと、悪と戦い人助けをするという行動こそが自分たちのアイデンティティーであり自分たちらしさであると言いたいのです。

以上を踏まえて、字幕の「パワーがすべて」を見直すと、原文のニュアンスから少しずれているように感じました。字幕の言葉を補うと「パワーが僕らのすべてを表している」ということを言いたいのだと思います。ここは尺が短く一瞬で消えるので、訳者様も苦労したのではないかと思います。

身のほど知らずにも、同じ文字数で別の訳を考えるなら…「“パワーが個性だ”」。
(もっといい訳ありますよ!という方はぜひコメントで教えてください。)

さいごに

この記事Part 2では家族の会話から自然と出てきた表現を中心に紹介したので、日常会話で使えるフレーズをたくさん取り上げることができました!

まだまだ紹介したい日本語表現と英語表現があるので、次回の記事も読んでくださると幸いです。

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