ラナ・デル・レイの2023年の新曲のタイトル「A&W」の意味は、American Whoreの略語で「アメリカのふしだらな女、売春婦」です。
歌詞には、まるで語り手が娼婦のような過激な表現が並んでいます。
しかし、歌詞というものは、文字通りの意味で捉えるのではなく、言葉に込められた真意や暗喩を解釈したり考察したり感じ取ったりすることに醍醐味があると思います。
この曲を文字通りに受け取って「セックス依存の曲だ」とか「ドラッグの曲だ」とか思う人がいるかもしれません。
しかし、少なくとも私はそうは思いません。
この曲を聴いて、頭に思い浮かんできた言葉は、
「諦め」「悲哀」「怒り」「皮肉」「放棄」「マヒ」です。
誰に対しての感情か?というと、それは…
【母親】【男性】【アメリカ社会】に対してのものではないかと思います。
なぜそう思ったのかは、『タイトルのA&W』と『曲にまつわる2つの映画』を考察してのことです。
それでは、ぶっとび考察をお楽しみください。
※いろんな解釈ができるのが歌詞の魅力です。一意見として、この記事が参考になりましたら幸いです。
【考察】A&Wに込められた意味は?
冒頭でもお伝えしましたが、この曲の「A&W」とは、American Whore、日本語で「アメリカのふしだらな女」という意味で使われています。
しかし、なぜラナは「A&W」という表記を採用をしているのでしょうか?
Whoreをそのまま出すには過激・露骨すぎるからなのかもしれませんが、それにしても「A&W」という表記をあえて起用している理由は何でしょう?
真ん中の「&」は不要だと思いませんか?
A&Wを検索して真っ先に出てくるのが、アメリカのファストフードチェーン「A&W」か、炭酸飲料の「A&Wルートビア」です。
ラナの曲には、ほかにもアメリカの代表的な炭酸飲料の名前が付けられた曲がいくつかあります。
- 「Diet Mountain Dew」『Born To Die』より
- 「Cola」『Born To Die』より
歌詞には、ファストフードの話も炭酸飲料の話も登場しませんが、歌詞の内容と絡ませて敢えてこの表記にしたのではないかと思います。
ここからは私の考察です。
「A&W」という表記にしたのは、アメリカの大量消費社会への皮肉が込められているからではないかと思います。
このテーマは、アルバムのファーストシングル「Did You Know That There’s a Tunnel Under Ocean Blvd」でも共通することです。
加えて、大量消費される炭酸飲料水のように、消費される女性を表しているのではないかと思います。
歌詞の語り手は、何もかもどうでもよくなって、男をホテルに呼び込んでは行為におよび、終いには「もしかすると私、これが好きなのかも」と、感覚が毒されてマヒしている女性が描かれています。
これは、次に紹介する映画の主人公と共通しています。
映画「Teenage Diary of a Girl」との関係
歌詞のヴァース2に「Teenage Diary of a Girl」という表現が登場します。
これは、2015年公開の映画のことで、邦題は『ミニー・ゲッツの秘密』です。
ミニーは、セックスを求めていろんな人と関係を持ちますが、ミニーが本当に求めていたのは、誰かに愛されたいという純粋な気持ち、特に母親の愛情に飢えていたように感じます。
ミニーの母親は忙しい人で、自分の娘と自分の恋人を2人きりにしていました。
だから、ミニーは母の愛情がもらえないことでポッカリと空いてしまった心の隙間を、カラダを差し出せば、次々と寄ってくる、男性たちで埋めているようでした。
ミニーはもっと自分を大事にすべきなのに、他人に求められることに快感を覚え、感覚がマヒしていき、まるで娼婦のように、心も体も自分以外の誰かに消費されていました。
ラナのことに話を戻すと、ラナはこれまで母親との不和を「My Momma」や「Black Bathing Suit」で歌っています。
この曲の歌詞は、この映画の真意を表現しているように思えます。
映画『ビッグ』との関係
歌詞の中に直接的には登場しませんが、2部構成になっているこの曲の後半部のコーラスは、トム・ハンクス出演の映画『ビッグ』(1988年)のあるシーンを彷彿とさせます。
この映画の内容も、ラナの曲と重なるものがあります。
たとえば、ジョッシュは一晩で大人へ成長しますが、曲の冒頭でラナは≪9歳から側転をやっていない≫と歌っています。
これは、語り手がいかに早熟なのかを感じ取れるラインです。
また、血のつながった親子であるのに、母親はジョッシュの言うことを信用せず、息子を家から追い出してしまいます。ここも、ラナと母親の関係性と類似しています。
さらに、10代の本来の体を喪失したジョッシュのように、歌詞の語り手は自分の心も体も完全に見失っているのです。
“shimmy shimmy ~”から始まるフレーズは他の歌にも登場しますが、この映画の内容との関連性を感じずにはいられません。
この記事では、映画に焦点をあてて記事を書いていますが、”shimmy shimmy ~”からはじまるフレーズは、他の曲の歌詞の中にも登場するので、その代表例をご紹介します。
たとえば…
- 「Down Down Baby」
⇒これは子どもの手遊びの歌として広く知られている曲です。 - 「Shimmy Shimmy KO KO Bop」
⇒これはリトル・アンソニー&ジ・インペリアルズ(Little Anthony and the Imperials’s)の曲で、魅力的な女性に心惹かれることを歌っています。
さいごに
母親に対する毒。
男性に対する毒。
アメリカ社会に対する毒。
この曲は、それらの毒を子ども向けの曲でアレンジして、バランスを取っているように感じます。
昨年、アメリカでは妊娠中絶をめぐる問題が話題となりました。
9歳の女児が性暴力で妊娠したのに、地元で中絶を受けられないことが大きな問題にもなりました。
自分の体の選択を自分で決められず、多くの女性が、心も体も男性やアメリカ社会に消費されて疲弊し、いまも苦しんでいます。
この曲からは、ラナの、そして女性の、「諦め」「悲哀」「怒り」「皮肉」「放棄」「マヒ」、そういった感情が伝わってきます。
コメント
lanaの解釈や深掘りはほとんどないので、すごくありがたいです。曲の世界観が広がります。新しいアルバムの他の曲の解釈もお願いします!
コメントありがとうございます。ブログ継続の励みになります!
解釈・考察記事は自分の想像力が足りないせいか頭がパンクしそうになることがままありますが、そう言っていただけると頑張れます!、
新しいアルバムいいですよね!中でも私は「Peppers」が好きです。アンジェリーナ・ジョリーが頭から離れません。
引き続き、ラナの記事も増やしていきますね。
もうすぐグラミーですね!海外同様日本でも知名度もっと人気になって欲しいです。
この曲は強烈ですよね。最初はすごくショックでしたが今はアルバムの中でも大好きな曲の一つです♪
和訳すごくわかりやすいです! 普通に和訳してるサイトはよく見かけますがやっぱり考察していかないとわからないですよね。ミニーゲッツの映画はこの曲聴いた後すぐ観ましたが、なかなか強烈な映画でした 笑
コメントありがとうございます!グラミー賞は逃してしまいましたが、授賞式でラナ&テイラーのツーショットを拝めて私的には大満足です。
考察のしがいがあったり、後半で大きく化けたりするこの曲が、私も大好きです。曲も映画も強烈ですね!
もっとラナファンが増えて、日本でライブしてほしいですね。そのときが来るまで、微力ながら地道にラナの記事を増やしていきますね。