なんか強くなれた気がする。そんな曲です。
この記事では、ラナ・デル・レイ(Lana Del Rey)の「Peppers(ペッパーズ)」とは、どんな曲なのか、個人的にどんな人に聴いてもらいたいのか、そして覚えておきたい英語表現を順にご紹介します。
その前に、曲名「Peppers」の意味を確認しましょう。
「Peppers(ペッパーズ)」は歌詞の中で一度しか登場しません。
ヴァース1の≪私とボーイフレンドはチリ・ペッパーズを聴く≫と歌う箇所です。
チリ・ペッパーズは、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのこと。
(※日本での呼称はレッチリで通ってますが、海外ではチリ・ペッパーズと呼ばれることが多いです)
ラナは、レッチリのライヴに行ったり、レッチリにインスパイアを受けてアルバム制作を行ったり、大のレッチリ好きです。
そんな好きなバンドの名前が付けられたこの曲には、どんな意味が込められているのでしょうか?
【歌詞の要約】
- 歌詞の語り手は「私はアンジェリーナ・ジョリー(以下、アンジー)」と自分に自己暗示をかけ、三つ編みヘアになることで、アンジーが持っている色気や大胆さをトレースし、彼女になりきる。変身する。
そして普通の人がやらないような向こう見ずな言動に出る。 - 向こう見ずな言動例
→ レッチリ並みにヒットソングを努力せずに書く、と大口を叩く
→ 全裸になって部屋のブラインドを全開にし、隣人に裸踊りを見せちゃう大胆さ
→ 上着に刃物を忍ばせたり、バイクやトラックを乗りこなしたりするワイルドさ
→ 失うものはほぼないからと言って、パンチラをものともせずにやっちゃう脳殺さ
→ コロナ陽性者のボーイフレンドともキスしちゃう無鉄砲さ
【歌詞の考察】
コーラスは何をしている?
≪あなたの膝の上に私の手を置かせて、私の髪を三つ編みしていいよ≫と歌う箇所は、どういう状況でしょう?
歌詞の語り手が、(膝立ちで)相手の膝の上に手を置いている状況を想像すると、語り手の頭は自然と相手の股間辺りにきて、三つ編みしてもらいやすい状況ができあがります。
このコーラスは、トミー・ジェネシス(Tommy Genesis)の2005年の曲「Angelina」をサンプリングしたもので、トミーはこの箇所を「いかがわしいことを想像して」と答えています。
みなまで言いませんが、つまり、いかがわしい行為を自ら進んで相手に行っているのがコーラス部分です。
コーラスだけみても、相手を積極的にリードして、主導権を握るような大胆な人物像であることが伝わってきます。
まるでアンジェリーナ・ジョリーのような強い女性を彷彿とさせます。
メタモルフォーゼ(変身)の儀式
コーラスでは呪文のように「私はアンジェリーナ・ジョリー」だと自己暗示をかけて、メンタル面からアンジーになろうと試みています。
でも、それだけでは不十分。
そこで、アンジーがこれまで演じてきたキャラクターの中で、ずば抜けて身体能力と行動力の高い、映画『トゥームレイダー』のララ・クロフト風の三つ編みを相手にしてもらうことで、フィジカル面を補完して、変身を完全なものにしています。
メンタル面とフィジカル面の両方から、完全体アンジェリーナ・ジョリーに変身しようとしている部分に面白みを感じます。
セーラームーンやプリキュア同様、女性の変身に呪文とビジュアル変化はつきものです。
アンジーとレッチリの共通点
アンジーが登場するコーラス部分の歌詞は、トミー・ジェネシスの「Angelina」をサンプリングしたものであることは前述しました。
そしてレッチリが登場するヴァース1は、ラナがオリジナルで書いた部分です。
アンジーとレッチリ。
2人の歌手がバラバラに書いたこの2つの言葉に共通して込められた意味は何でしょうか?
突然ですが、あなたは「この人みたいになりたい!」と思うような憧れの人はいますか?
はたまた、推しのアーティストはいますか?
元気がないときや一歩踏み出せないとき、背中を押してくれるのが憧れの人だったり、推し(の曲)だったりします。
「憧れの人ならどう行動するだろう?」と想像してその人になりきってみたり、推しの曲を聴いて自分を鼓舞して勇気をもらったり。
アンジーとレッチリは、それぞれ2人にとって自分を強くしてくれるパワーワードではないかと思います。
誰に対してのI’m in love?
“be in love”は「恋している、恋愛中である」の意で、このあとに”with someone”が付いて”I’m in love with Adam.(アダムに恋している/アダムと恋愛中)”と表すことがあります。
しかし、今回の歌詞に”with you”は付いていません。
もちろん、”I’m in love.”だけでも文法的に間違いではなく、”with someone”がなくても前後の文脈から誰に恋しているか明らかであるときなどに、省略されていることが多いです。
ですが、語り手が恋している相手として、この曲に登場する「≪you/my boyfriend≫に恋している」と断定するには少し違和感を感じます。
なぜなら、≪you/my boyfriend≫の情報が少なく、歌詞の大部分が≪I≫の情報で埋まっているからです。
「私に~させて」だとか「私が~する」だとかばかりで、歌詞を読み込んでも相手の人物像は浮かび上がってきませんでした。
あくまで私の推察ですが、ここは特定の相手というよりも、『あなたに恋して、まるでアンジーのように積極的になった自分に恋している』というニュアンスも含まれているから、with you/my boyfriendは敢えて書いていないのではないかと思いました。
人は誰かを好きになると、見た目や態度が少なからず変わります。
誰かを好きになり、アンジーのように大胆で積極的な女性へと変わっていく自分が好き。
“I’m in love”に留めておくことで、そんな変化を遂げた自分を楽しんでいる様子が伝わってきます。
【こんな人に聴いてほしい】
- 好意を抱いている相手に対して、もっと積極的になりたい人
- 色気を出したい人
- 自分に自信をつけたい人
- パートナーに対して、主導権を握りたい人
【覚えておきたい英語表現3選】
それでは、この曲の歌詞から特に気になった英語表現をご紹介します。
この記事を英単語帳代わりにして、お役立てください。
criss-crossの意味は?
「十字形、十字交差」
crisscross(クリスクロス)は自動詞、他動詞、形容詞、名詞、副詞と、多岐に使われますが、歌詞には名詞で登場します。
歌詞の直前は≪三つ編み≫の話をしていることから、歌詞のcriss-crossの意味は、トゥームレイダーのアンジェリーナ・ジョリーのように、≪後ろらへんで太い(十字交差の)三つ編みにして≫と、三つ編みの言い換え表現だと考えられます。
throw caution to the wind(s)
「慎重さを忘れる、思い切ったことをする」
直訳すると「(危険に対する)注意を風に放り投げる」で、そこから「大胆な行動をとる、後先を考えずに行動する」といった意味を表します。
skinny-dipの意味は?
「全裸で泳ぐこと」
スキニージーンズで知られるスキニーの意味は、「瘦せこけた」という意味ですが、skin(皮)に接尾語-nyが付いているだけなので、「皮っぽい」という意味もあります。
皮(skinny)だけで水に浸かる(dip)ことから、「素っ裸で泳ぐこと」を表します。
ちなみに、こうした「肌・裸」のイメージのあるskinnyは、通常は表に露出することはないので、スラングで「ゴシップ、特ダネ、内部情報」という意味もあります。
さいごに
わたしは、アンジェリーナ・ジョリー。
自信はある。
何だってやれる。
怖いものは何もない。
そんな最強スキンを4分ちょっとで手に入れられるのが、この曲の魅力だと思います。
コメント
ありがとうございます。すごくわかりやすいです。
歌詞を見て何のこっちゃ???
でしたが、なるほどーです。
この曲って中毒性がありますよね。
一時、頭の中でアンジェリーナジョリーが何度もリピート状態になってました💦
コメントを残してくださり、ありがとうございます。励みになります!
私も「Peppers」中毒者のひとりです。気持ちを強く持ちたいときにリピート再生します。
サビの部分は呪文のようで、本当にクセになりますね。