映画『インクレディブル・ファミリー』は内容が面白いだけでなく、脚本(英語表現)と字幕(日本語表現)も面白い!
そう感じたので、シリーズ化してセリフをいくつか取り上げてたいと思います。
今回はそのPart 5です!
取り上げるシーンは「スクリーンスレイヴァー逮捕後の祝賀会~ラスト」までです。
まだ観たことがないという方は、『インクレディブル・ファミリー』の紹介記事を読んでぜひ映画を観てください。
この記事で分析するトピックはこちらです。
面白い英語表現
Elastigirl: I know I should be up there but I had to step away from the grip and grins, you know?
Incredibles 2
(愛想笑いに疲れて抜け出しちゃった)
●スクリーンスレイヴァーを逮捕できたことを祝うパーティーにて。「パーティーに参加しないの?」と質問するイヴリンに対して、イラスティガールのセリフ。
注目したいのは、grip and grinという表現です。
英辞郎には「首脳会談前の握手や式典でのテープカットなどで、外交辞令としてカメラに向かってふりまく笑顔」とあります。
「握る」という意味のgripは、ここでは「握手」のことを指しています。grinは「歯を見せてニッコリと笑う」こと。
映画やニュースなどで、両国の首脳が手を握って、カメラ目線で笑顔を振りまいている場面を見たことがあるのではないでしょうか?
ああいうシーンから来ている表現です。
Violet: Well, I’m sorry she’s rich and will probably get no more than a slap on the wrist.
Incredibles 2
(お金の力を使って罪を軽くするかも)
●イヴリンが逮捕され刑務所に送られることになったことに対する、ヴァイオレットの一言。
気になった表現は、slap on the wristです。
slap on the wristを直訳すると「手首を叩く」ですが、そこから「軽い罰」という意味の表現です。
この表現には、「もっと厳しい罰がふさわしい」というニュアンスが含まれていることに注意が必要です。
言い得て妙の字幕
Bob: or about you having to pay the price for a choice you never made.
Incredibles 2
(とんだ目に遭わせたよな)
●ヴァイオレットの恋路を邪魔してしまったことを謝罪するボブのセリフ。
直訳は「がしてもない選択の代償をお前に払わせてしまって…」ですが、これでは曖昧過ぎて何を言いたいのかはっきりしません。
父親の気持ちになって、悪気がなかったとはいえ、ひどい目に遭わせてしまったことを心から詫びている様子が字幕には表れています。
Elastigirl: But you love him, you two are this company. Yin and yang.
Incredibles 2
(でも仕事の息はピッタリ)
●「兄さんから逃げたい」と言うイヴリンに対して、イラスティガールの一言。
Yin and yangとは「陰陽」のこと。
陰陽とは、相反する2つの性質、陰と陽で万物が創り出されていると考える中国の思想です。男は陽、女は陰にあたります。
ウィンストンとイヴリンの兄妹は陰陽のように、対立しながらも影響し合っているのです。
それを「息はピッタリ」という字幕で表現されている点が素晴らしいです。
Mr. Incredible: Yeah, that’s what I thought last time.
Incredibles 2
(だから油断できない)
●スクリーンスレイヴァーのゴーグルを外されて正気に戻ったMr.インクレディブルだが、イラスティガールと戦おうとする。「私よ」と言うイラスティガールに対する、Mr.インクレディブルのセリフ。
直訳すると「ああ、それは前回思ったこと」です。
前回、イラスティガールがゴーグルで操られているとも知らずに助けに行ったところを彼女に攻撃されました。
その時のことを思い出して再び戦闘態勢に入ったのです。
原文のまま出すと唐突感があります。
そこで字幕では正気に戻ったMr.インクレディブルが言いそうなセリフに言い換えています。こちらの日本語表現も素晴らしいです。
最後に
5記事にわたって、映画『インクレディブルファミリー』の脚本のうまさや、興味深い英語表現、字幕をご紹介しました。
英語学習者の方はもちろんのこと、日本語表現力を上げたい方や、コンテンツ解釈力や脚本力を磨きたい方の参考になれば幸いです。
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