Lorde -Stoned at the Nail Salon-【解釈】立ち止まる時間があってもいい

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働きすぎてはいませんか?頑張りすぎてはいませんか?

「立ち止まってる時間なんてないよ!」とか「もっと努力して」とか、あなたの気持ちを引き締め、叱咤激励してくれる曲は無数にあります。

でも「なぜか、しっくりこない」「胸に刺さらない」それどころか「自分がどんどん追い込まれていくようで余計につらい」…そんなあなたに届けたいのがこの曲。

激動の時代に立ち止まる大切さを教えてくれるロードの「Stoned at the Nail Salon」です。

人生の道は無数にあります。

こっちの道を歩んでよかったのだろうか?

あっちの道のほうがよかったのではないか?

悩みは尽きません。

ちょっと頭を休ませて、この曲を聴いてみましょう。

この曲はこんな人にオススメ

・立ち止まる時間が欲しい人
・立ち止まる時間を肯定してほしい人
・忙しくて家族や友人との時間を取れていない人
・人生に疲れてしまった人
・人生の迷子になっている人
…など。

歌詞の解釈と英語表現

【Verse1の概要】丁寧な日常描写の先に、よぎるものとは?

ごくごく普通の日常が描かれているVerse 1。

キッチンの窓辺で叉骨(さこつ)を乾かしてもらったり、ドアに下がっている蔓に目を向けたり、呼べば寄ってくる犬と戯れたり…アーティストではなく、ひとりの人間として日常を描いています。

丁寧な日常描写に、時間がゆっくりとゆっくりと流れている様子が感じ取れます。

日常を丁寧に観察できるほどゆとりのある時間を過ごして満足しているようにも見えますが、最後には、突如として襲ってくる不安が綴られています。

「あれ?私は歌手よね?何気ない日常は大好きだけど、いまこの瞬間にも何か失っていってるんじゃないか…仕事しなくていいんだっけ…?」そんな疑問が頭をよぎるのです。

仕事とプライベートのバランスが難しいと世の中では言われていますが、ロードの表現を読み解く限り歌手も例外ではないようです。

【英単語】wishbone: 叉骨(鳥類に見られる2叉状の骨のこと)

天気予報がなかった昔は、叉骨(さこつ)で感謝祭以降の天候を占っていたそうです。

やり方は至ってシンプル。

感謝祭できれいに食べた七面鳥もしくはガチョウの叉骨を取り出し、放置して骨を乾かします。

骨の色が白に変われば、暖冬。青/黒/紫に変われば、厳冬。

感謝祭などで鳥の丸焼きを食べる機会のある人は、ぜひ試してみてください。

【Verse 1の解釈】叉骨を使って占っているものとは?

天気を占っているわけではありません。

自分の人生を占っているのです。

この曲はセカンド・アルバム『Melodrama』のライブツアーが終わったあとの数カ月に書かれたものです。

アーティストにとって、ツアーは最も忙しい音楽活動と言えるでしょう。

家にはしばらく帰れなしし、家族や友人に会う時間もないし、いろんな都市や世界を転々としなくてはないないので、当然と言えば当然でしょう。

そのツアーの忙しさから開放されて、自分の時間を好きなように使って過ごしていた休息期に書いたのです。

我々でいえば、休みなくバリバリで働いた後、燃え尽きたように会社を辞めてしばらく無職になるような感覚でしょうか。

忙しい生活とは全く正反対の時間にゆとりのある生活。

自分の置かれている状況が180度変わり、自分の選択はこれでよかったのかと自問していることがこの歌詞に感じ取れます。

【Pre-Chorusの概要】時にはクールダウンも必要

このパートでは、これまでの生き方を省みて、今後はどう生きるか思案する人生の分岐点を描いています。

歌詞にはmany summersという言葉が登場します。どういう意味でしょうか?次の項目で考察します。

【Pre-Chorusの解釈】many summersが指すものとは?

これまでの曲で何度も”summer”という単語が出てきます。

過去で出てくる”summer”は恋愛を表す暗喩として使われていました。

しかし、この歌詞に出てくるsummerも同じようにホットな恋愛事情を表すものとして捉えてしまうと、前後の内容と全く合わず唐突な印象になってしまいます。

では何を指しているでしょうか?

歌手として休みなく働いてきた数年の活動期間のことを表していると考えれば、合点がいくかと思います。

2012年の『Pure Heroine』から2017年の『Melodrama』ツアーが終わるまで、越えてきた夏の数のことを考えると”summer”が複数形になっているのもこれで説明がつきます。

アーティストとして、いくつものホットなサマーを超えてきたのです。

さらに、この解釈を決定づけるのが”my hot blood”です。

忙しさがピークに達すると、アドレナリンが分泌されてハイ状態になったことはありませんか?

いわゆる「ゾーン」状態のことです。

目まぐるしく変わる激動の時代で、ロードは血流を促進させエンジン全開のハイ状態で活動を続けてきたのです。

そんな自分を労るためにクールダウンも必要だと言い聞かせています。

人生のインターバルを挟むことで、いままで仕事で忙しくてできなかったことができたり、気づかなかったことに気づけることはあると思います。

【Chorusの解釈その1】時代は変わる、みな年を取る

フル稼働状態から、クールダウンすることにしたロード。

でも自分が休みを取っている間に、ビリー・アイリッシュをはじめとする新進気鋭のフレッシュなZ世代アーティストがどんどん世に出てきて、ランキングの顔ぶれは変わっていきます。

そんな中でも、焦りは禁物。

自分より若くて綺麗な人がチヤホヤされていても、誰しも年を取るものです。

自分が立ち止まろうが動き続けていようが、時間の経過はみな平等です。

「 And all the times they will change, it’ll all come around 」のところは、ボブ・ディランの『The Times They Are a-Changin』(邦題:時代は変る)の歌詞を引用しています。

どういう曲かというと、時代は移り変わっていき古い価値観が通用しなくなったことを説くプロテストソングです。

【Chorusの解釈その2】 ネイルサロンでハイ状態、その心は?

ハイ状態(仕事に全力で取り組むというニュアンス)で仕事に注力してきたロードが、今度はネイルサロンでハイ状態になっているということは、全力で息抜きを楽しんでいると考えることができます。

【Chorusの英語表現】I’m just stoned: ハイ状態である

【Verse 2の概要】あんなこと、こんなこと、あったでしょう

Verse 2は、昔の無邪気な記憶、とくに恋愛の記憶を思い返す役割を果たしています。

Louvre』に似たような歌詞が出てきました。
Half of my wardrobe is on your bedroom floor
(私のワードローブはあなたの寝室の床の上)

Homemade dynamite』では、似たような厄介な“2人組”が登場します。
A couple rebel Top Gun pilots Flying with nowhere to be
(反乱軍の一流パイロットコンビ 行く先もなく飛んでいる)

前のアルバム曲の歌詞に触れながら、かつての刺激的な恋愛を懐かしく回想しています。

「太陽」がもつ意味は、ここでは今に至るまでの時間の経過です。

セカンドアルバム『Merodrama』は、ロードの心の内をのぞき込んでいるような感傷的な曲が中心で、アルバムを時間帯で表すなら間違いなく夜です。

そして今回のサードアルバム『Solar Power』はアルバム名に”Solar”が付いていることもあり、日中の明るい時間帯といえるでしょう。

太陽は昇るときがやっと来ました。

【Verse 2の解釈】かつてのはた迷惑な二人組はどうなった?

若い時というのは、無分別で若気の至りで無茶なことをしてしまうものだと思います。

あの頃の2人(ロードと恋人)も例外ではありません。

若くて未熟で、軽はずみな行動も取っていたのでしょう。

そんな2人も時間の経過とともに成長したことが、「新聞配達」という歌詞に表れています。

はた迷惑だった2人組が早朝から新聞配達しているのを想像すると、笑えてきます。ここはロードのユーモアが光る歌詞です。

【Verse 2の英単語】hell-raiser: 騒々しい人、はた迷惑な人、厄介者

英英辞典によると「特にお酒を飲みすぎたせいで、大声を出したり暴力的に振る舞ったりして問題を引き起こす人」のことを指すようです。

まとめ

自分の選択した道が本当に正しかったのかと考えることは誰しもあるかと思います。

でも、その道が今までとは全く正反対の道であっても、あなたはあなたのままです。

二叉に分かれている叉骨でも元を辿れば、同じ1つの骨だということに気づきます。

時間は絶えずみな平等に経過していきます。

世の中は常に変わっていきます。

だからといって、自分自身も常に活動し働き続けなくてもいいと思うのです。

インターバルを挟むことでそれまで手に入らなかった自分だけの時間や家族との大事な時間は、立ち止まってみないとゆっくり味わえないものです。

立ち止まることも1つの選択として正しいことをこの曲から学びました。

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