この記事では、1930年に作曲家ハロルド・アーレン(Harold Arlen)が作曲した「Get Happy」についてご紹介したいと思います。
具体的には、【曲の要旨】【名曲誕生時の時代背景】【この曲が使われている映画】【そのほかのハロルド・アーレンの名曲】をご紹介します。
レディー・ガガ(Lady Gaga)が、2024年9月27日にリリースしたアルバム『Harlequin(ハーレクイン)』の中にもこの曲が収録されています。
この曲について知ることで、映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ(2024)』を理解する上でのヒントになるかもしれません。
“Get Happy”の概要
- 作曲はハロルド・アーレン、作詞はテッド・ケーラー
この2人は「Stormy Weather」「Let’s Fall in Love」などの名曲も共作している - 歌詞は、心配事や悩み事は忘れたり追い払ったりして、幸せになろうという前向きかつ楽観的な内容が綴られている
- “罪を洗い流す”“ハレルヤ”“審判の日”“約束の地”など、宗教用語が含まれているのも特徴
それは、“Get Happy”が黒人霊歌と深い関係があることに起因するものと思われる
黒人霊歌とは、奴隷によってアメリカに連れてこられた黒人がキリスト教に触れて生み出した宗教音楽のこと
辛く厳しい生活を送っていた彼らにとって、このキリスト教音楽は心の支えだった
1930年アメリカの主な出来事
- 世界恐慌の影響
1929年に株価が大暴落したことを皮切りに、アメリカ経済は衰退していった
失業者の急増、企業の倒産が相次ぎ、経済不況に陥った - 農業不況
土埃の嵐がアメリカ中西部を何度となく襲い、農地を荒廃させた
これにより多くの農民が破産し、何百万人もの農民が都市部への移住を余儀なくされた
この曲が使われている映画
- 『サマー・ストック(1950)』
ジュディ・ガーランド主演のミュージカル映画
ジュディが劇中で歌う“Get Happy”が映画の見どころのひとつ
- 『ジュディ 虹の彼方に(2019)』
ジュディ・ガーランドの伝記映画
- 『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ(2024)』
『ジョーカー(2019)』の続編映画
ハロルド・アーレンの名曲
「Get Happy」以外にも、知っておきたいハロルド・アーレン作曲の名曲がいくつもあります。
ここでは、珠玉の3曲をご紹介します。
- Over the Rainbow
映画『オズの魔法使い(1939)』のテーマソング
劇中でドロシー役のジュディ・ガーランドが歌う - It’s Only a Paper Moon
映画『当たって砕けろ(1933)』『ペーパー・ムーン(1974)』で使用 - Come Rain or Come Shine
映画『フォー・ザ・ボーイズ(1991)』でベット・ミドラーがこの曲をパフォーマンス
映画『キング・オブ・コメディ(1955)』でレイ・チャールズのカバーが使用
さいごに
経済不況・農業不況のダブルパンチがアメリカを襲っているときに、生まれたのが今回ご紹介した「Get Happy」です。
暗いニュースばかりで心が参ってしまいそうな時代に生まれた曲。
だからこそ、踊り出したくなるような明るいメロディーと、どんな人でも幸せになれることを説いた歌詞からなるこの曲には、凄みと力強さを感じます。
ジュディ・ガーランドは、映画『サマー・ストック』でこの曲を歌っていますが、実生活では、薬物中毒と精神疾患で苦しみ、この映画のあとに解雇され、自殺未遂まで起こして自分を追い込んでしまいます。
ギリギリのところを生きていた彼女が歌う「Get Happy」。
そして、映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ(2024)』では、ギリギリを生きている登場人物がこの曲を歌います。
「Get Happy」の宗教的背景・歴史的背景を知ったうえで映画を鑑賞すると、別の視点が見えてくるかもしれません。
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