映画『となりのトトロ』のメインキャラクター、サツキとメイ。
2人の英語版の声優は、誰だかご存じですか?
サツキの声優は、ダコタ・ファニング。
『アイ・アム・サム』や『宇宙戦争』などで天才的な演技力が評価され、子役時代からその名を馳せていた、あのダコタ・ファニングです。
メイの声優は、エル・ファニング。
『ネオン・デーモン』や『マレフィセント』シリーズなどで、姉に劣らず、着実に映画界でのキャリアを積んでいる、あのエル・ファニングです。
『となりのトトロ』で姉妹役を演じている二人ですが、実際にダコタが姉、エルが妹のリアル姉妹なのです。
そんなハリウッドで大活躍している二人が出演した英語版の『となりのトトロ』の中から、気になるセリフの英訳をご紹介します。
そのセリフとは、【マックロクロスケ】です。
いくら英語上級者の方でも、すぐに英訳を思いつく方はそういないのではないかと思います。
もしSNSや街中で英語圏の人と仲良くなり、ジブリ映画の話になった時に、スラスラと「マックロクロスケ」の英訳が出てくるように、この記事をご参考いただければ幸いです。
マックロクロスケがセリフに出てくる実際のシーンから、どのように翻訳されているのか確認します。
また、英語吹き替えと英語字幕との間に表現の違いが出ているので、その点も取り上げます。
父「こりゃマックロクロスケだな」
音声:It was probably just some soot gremlins.
『となりのトトロ(My Neighbor Totoro)』
字幕:I think they were…dustbunnies.
『となりのトトロ(My Neighbor Totoro)』
まず最初に映画で「マックロクロスケ」という言葉が出てくるのは、こちらのお父さんのセリフです。
吹き替えではsoot gremlins、字幕ではdustbunniesが使われています。
各単語の確認です。
- soot: すす
- gremlin: 物、特に機械の中に侵入し、それらの動作を停止させる架空の小さな生き物
(映画『グレムリン』で、この単語のイメージはなんとなくつくかと思われます) - dustbunny: ほこりの塊
使われている単語で気になるのは、なぜdustbunny(ほこりウサギちゃん)が「ほこりの塊」という意味になっているかということです。
語源を辞書や海外サイトで調べてみましたが、残念ながら信頼に足るソースからの解説はありませんでした。
しかし、そんな中でも個人的に納得したネイティブの説明がこちらです。
「ウサギはフワフワしていて、隅でじっとしていることが多く、多産の象徴である。それらの点が、フワフワして、隅にかたまり、量産される≪ほこりの塊≫の特徴と合致するからではないか」といったものです。
両者の共通点を挙げると妙に納得できる英語表現です。
では、映画でほかにマックロクロスケという言葉が出てくるシーンでは、どのように翻訳されているのでしょうか?
以下、2つの見出しでご紹介します。
サツキ/メイ「マックロクロスケ出ておいで!出ないと目玉をほじくるぞ」
音声:Come out, come out, wherever you are!
『となりのトトロ(My Neighbor Totoro)』
字幕:Come here, dustbunnies. Come out, come out, wherever you are!
『となりのトトロ(My Neighbor Totoro)』
オリジナルの個性あるセリフ「目玉をほじくる」の部分がごっそり抜け落ちていて、驚いた方もいらっしゃるかもしれません。
これには、理由があります。
当時、吹き替えを行う権利を獲得した映画会社FOXが、道徳的に不適切だと判断して、”Come out! Come out! Or we’ll pull your eyeballs out!”から”Come out! Come out!”に変更したとのことです。(情報源:IMDb)
FOXの権利が2004年に切れたあと、今度はディズニーが2006年に吹き替えを刷新してDVDをリリースしています。
そこで、オリジナルに近づけた翻訳に変更してくれたらよかったのですが、残念ながら今回の記事で引用しているDVDの発売元はディズニーなので、変更されていません。
現状の英訳だと、オリジナルのサツキとメイの無邪気さやセリフのユニークさが欠落しています。
子どもも鑑賞できるようにするために「道徳的に不適切」という判断を下すのは適切なのかもしれませんが、英語圏の方とセリフのユニークさを共有できないのは残念に思います。
カンタのおばあちゃん「こりゃススワタリが出たな」
音声:You’ve got soot sprites in your house.
『となりのトトロ(My Neighbor Totoro)』
字幕:That must be the “soot spreaders”.
『となりのトトロ(My Neighbor Totoro)』
ススワタリが正式名称で、マックロクロスケが通称。呼び方は違えど同じ物体を指していることが、このシーンで分かります。
吹き替えと字幕とでは、微妙にニュアンスが違いますが、まずは重要単語の確認です。
- sprite: 妖精、小鬼、霊魂、オバケ
- spreader: 広げる人、流布する人
これを踏まえて私なりに訳すと、吹き替えは「この家には”すすの精霊”が宿っている」、字幕は「それは”すすバラ撒き”に違いない」。
吹き替え/字幕ともに、≪マックロクロスケ≫の英訳と表現を変えているのが、とてもいいと思います。
特に、吹き替えで使われているspriteには「小さな妖精/精霊」という語感が含まれているので、実物のイメージとも合致したシビれる英訳だと思います。
まとめ
実際に使われている英語を元に、マックロクロスケの英訳をご紹介しました。
国にもよりますが、英語圏の方非英語圏の映画を鑑賞するときは、吹き替えで鑑賞することが主流のため、吹き替え版の英語を覚えておくと、英語圏の人にも通じると思います。
そして、「マックロクロスケ出ておいで!出ないと目玉をほじくるぞ」のセリフは、大人の事情でニュアンスが英語圏の人に伝わっていない可能性があるので、注意が必要です。
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