映画『インクレディブル・ファミリー』は内容が面白いだけでなく、脚本(英語表現)と字幕(日本語表現)も面白い!
そう感じたので、シリーズ化してセリフをいくつか取り上げていたいと思います。
今回はそのPart 3です!
取り上げるシーンは「ヒーロー3人が実業家ウィンストンの話を聞きに行くところ~イラスティガールが暴走列車を止めるところ」までです。
まだ観たことがないという方は、『インクレディブル・ファミリー』の紹介記事を読みぜひ映画を観てください。
この記事で分析するトピックはこちらです。
実用できる!日常会話で使える表現
Mr. Incredible: Oh, tell me about it.
Incredibles 2
(そのとおり)
●実業家ウィンストンがヒーロー3人を援護するセリフを言った後の、Mr.インクレディブルの返し。
Tell me about itは文字通り「そのことを教えて」という意味がありますが、同調・同意を示す相づちにも使われるフレーズです。
色々ある相づちフレーズの中でも、このTell me about it.は愚痴や不満といったネガティブな発言に対しての同感を表す相づちということがポイントです。
Helen: Okay, easy, tiger. It’s being loaned to us.
Incredibles 2
(落ち着いて ダッシュ/借りたのよ)
●ウィンストンの心意気で、彼の空き家に住むことになった一家。豪華な家に驚くダッシュの一言。
このeasy tigerは興奮状態にある相手を落ち着かせるために使う表現です。特に、子どもに対して使うことが多いようです。
言い得て妙の字幕
Mr. Incredible: Better than me?
Incredibles 2
(僕を差し置いて?)
●スーパーヒーローの視界を世界に見せることになり、やる気満々のMr.インクレディブル。しかし最初はイラスティガールに活躍してもらいたいとウィンストンに言われ、思わず本音が漏れる彼の一言。
「僕よりも彼女の方が適任だというのか?!」そう思っている本音が思わず口から出てしまっているのです。
「差し置く」は、考慮すべき人のことを後回しにする/なおざりにする、という意味なので、Mr.インクレディブルの感情を見事に表現した字幕です。
Mr. Incredible: Wait a minute. You’re saying what? I’m messy?
Incredibles 2
(待てよ 好きで壊してると思うのか?)
●いくら保険をかけているからとはいえ最初から何でもぶっ壊すことは避けたいためイラスティガールを選んだウィンストンに対し、Mr.インクレディブルの返し。
若干けんか腰とも取れる原文の言い方を字幕にも転移されているところが素晴らしいです。
特に、I’m messy.をただ「乱暴だと思ってる?」と訳すのではなく、前後の流れを汲んで「好きで壊してると思ってる?」にしているところは、職人技です。
字幕のココが気になる
Winston: Bigger than ever. Perfectly positioned to make some wrong things right.
Incredibles 2
(急成長さ/世間への発言力も大きい)
●両親が亡くなった後、兄妹で巨大な通信会社へと成長させたウィンストンとイヴリン。それを補足しつつ、次の話につなげるウィンストンの一言。
これは次の「Hence, this meeting.(だから諸君を呼んだ)」のセリフに係っていて、3人のヒーローを呼んだ理由を述べている大事なセリフです。
まず原文通りのままに訳すと「僕らの会社はいくつかの間違いを正すのに完璧な位置にある」です。
「いくつかの間違い」というのは、ヒーロー活動を法律で禁止ていること。
原文をそのまま出した方が、より自然な流れで次の話に進めるのではないかと思いました。
字幕にある発言力うんぬんよりも、ヒーロー活動禁止という間違いを正せるだけの影響力が我らにはある。⇒だから君たちを呼んだ。君たちの活躍と視点が必要。という流れです。
「じゃあ、あんたが訳してみなよ」とおっしゃるあなた。
おこがましくも同じ文字数で私の考えた訳は「急成長さ/間違いを正せる力もある」です。
自分ならこう訳すな~、と他に何かいい訳が思いついた方はぜひコメントをお待ちしております。
さいごに
この記事Part 3では字幕翻訳者様の職人の技が光る字幕が多いと感じました!
長い表現でも、的確で分かりやすい字幕を創り上げている訳者さんを尊敬します。
まだまだ紹介したい日本語表現と英語表現があるので、次回の記事も読んでくださると幸いです。
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