ラピュタは、スペイン語で「売春婦(La puta)」。
風刺小説『ガリヴァー旅行記』に登場する空飛ぶ島の王国「ラピュタ王国」から借用したとのこと。
『ガリヴァー旅行記』に特別な思い入れがあるわけでもなく、ただ説得力のある名前を付けて企画書を通しやすくするためだけに「ラピュタ」の名前を拝借したそうですが、果たして宮崎駿監督はラピュタの意味を予め知っていたのでしょうか?
他ジブリ作品『千と千尋の神隠し』も売春宿をモチーフにしているとの噂があるため、「ラピュタ=売春婦」を知っていた可能性も完全には否定できません。
このように「ラピュタ」はスペイン語圏やヒスパニック系の人たちにとって不快な印象を持つ単語であるため、英語版のタイトルに「ラピュタ」は採用されず『Castle in the Sky』と表記されています。
英語版の「天空の城ラピュタ(Castle in the Sky)」にはタイトルの他にも、オリジナルと大きく異なる箇所があります。
今回は、そんな英語版の日本語オリジナルとの違いを4つご紹介します。
【セリフの違い1】ドーラ「40秒で支度しな」
吹き替え:We leave here in one minute.
『天空の城ラピュタ(Castle in the Sky)』
字幕:Be ready in 40 seconds.
『天空の城ラピュタ(Castle in the Sky)』
字幕は日本語のセリフを元に翻訳されているため、オリジナルに忠実な訳です。
一方の吹き替えは、時間の部分「40秒」ではなく「1分」になっています。
なぜ、40秒ではなく1分なのでしょうか?
理由は吹き替え制作会社に問い合わせてみないと分かりません。
あくまで推測ですが、吹き替えの尺事情により、1分のほうが若干言いやすくて歯切れがいいためなのかもしれません。
しかし、このセリフは40秒にしてあることが最大の魅力と言っても過言ではないため、少し残念な印象を受ける吹き替えです。
そういえば、時間が出てくる有名なセリフがもう1つありますよね。
それが、ムスカの「3分間待ってやる」。
さて、では英語版はどのようになっているのでしょうか?
【セリフの違い2】ムスカ「3分間 待ってやる」
吹き替え:I’ll give you one minute, starting now.
『天空の城ラピュタ(Castle in the Sky)』
字幕:Three minutes.
『天空の城ラピュタ(Castle in the Sky)』
ここのセリフについて、質問です。
ドーラが40秒しか待てないのに対し、ムスカは3分も待ってくれて、「ドーラよりムスカのほうが親切だなあ」と思ったことはありませんか?
しかし、英語版ではドーラもムスカも平等に扱われているのです。
つまり、このシーンでも吹き替えは、3分ではなくドーラのセリフと同じ「1分」に変更されています。
英語圏の人と好きなセリフの話題になった時は、齟齬が生じるので気を付けたいポイントです。
【音楽の違い】足されたBGM
英語版の本編を再生して間もなく、最初に気づくことがあります。
それは、BGMが大幅に足されているということ。
オリジナルの劇中でBGMが流れていないシーンにも、音楽が流れているのです。
オリジナル版に慣れ親しんだ者からすると、この大きな違いにはすぐ気づきます。
これは、英語版制作に携わるディズニー側の提案によるものです。
「海外では全編を通してBGMが流れているのが普通だ」との主張から、オリジナルで流れているBGMを活かしながら久石譲さん自らが音を撮り直しています。
英語版でしか聴けないアレンジなので、要注目です。
【年齢の違い】老けたパズーとシータ
パズーとシータの年齢は劇中では明らかにされていません。
みなさんは、何歳くらいだと想定して観ていますか?
徳間書店の『天空の城ラピュタ(ロマンアルバム)』では、”シータとパズーは同じ年頃で12歳”と記載があるそうです。
身長や仕草などからも、だいたい10代前半くらいだと想定できますよね。
しかし、英語版吹き替えは明らかに10代前半は聞こえません。
pre-teens(10~12歳)ではなくmid-teens(15~17歳)に聞こえるように、しかも意図的に変更されているのです。
なぜだと思いますか?
理由は明かされていないので、以下は私の推察です。
英語版には、他にも手が加えらている部分があります。それは、海賊ドーラ一家の息子たちがシータに好意を寄せている場面です。
よくよく考えれば、ドーラ一家の息子しかりムスカしかり、大の大人が12歳の少女に好意を寄せたり求婚したりと、現実世界の常識で考えると完全に常軌を逸した行動です。
以上のことから、ディズニー側はパズーとシータの声の年齢を少しでも大人びて聴こえるように変更したのではないかと思います。
それにしても、映像の見た目は10代前半のままなので違和感は非常にあります。
さいごに
タイトルも、名言も、音楽も、声のイメージから連想される年齢像も、オリジナルとは異なりますが、名作に変わりありません。
この記事で紹介した違いは英語版ならではの味。
ジブリ好きの方でしたら、違いを理解したうえでぜひ英語版もお楽しみください。
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