Lana Del Rey「Did you know that there’s a tunnel under Ocean Blvd」3つの予備知識

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Lana Del Rey-Did you know that there’s a tunnel under Ocean Blvd Lana Del Rey

この記事では、2022年12月7日にリリースされたラナ・デル・レイの「Did you know that there’s a tunnel under Ocean Blvd」について取り上げます。

具体的には、この曲を理解するのに知っておきたい予備知識と、私の考察をご紹介します。

この記事のコンテンツ
  • 【歌詞全体】トンネルとラナの共通点
  • 【Verse 2】ホテル・カルフォルニアが表すもの
  • 【Verse 3】ハリー・ニルソンの「Don’t Forget Me」について
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【歌詞全体】トンネルとラナの共通点

タイトルになっている「オーシャン大通り下のトンネル」とは、Jergins Tunnel(ジャーギンンズ・トンネル)のことです。

【教養】Jergins Tunnelとは?

カリフォルニア州ロングビーチのオーシャン大通り下にあった歩行者用通路のこと。

主に、大通りのすぐそばにあるビーチやビーチ内の遊園地へ行きたい人向けに造られました。

「なぜビーチへ行くのに地上を歩かずトンネルが必要だったのか?」と疑問に思うかもしれません。

この通路は1927年から1967年までの間使われていました。

その時代というのは、自動車が普及され始めたり、まだ路面電車が走っていたりで交通整理が追いついていませんでした。

その上、週末になるとビーチ目当てでその危険な大通りを渡りたい人でごった返し、人身事故が多発していたそうです。

そういった経緯でこのトンネルは造られましたが、大通りの拡幅計画が決まったことで閉鎖されることになりました。

今は史跡として保存されてはいますが、入り口には人為的な壁で覆われています

トンネル内の装飾は、歌詞で説明されてある通り、床にはモザイクタイル壁には陶器製のタイルが使われ、柱は装飾的なフリーズで覆われています。

凝った装飾が施され、当時の人々にとって欠かせないインフラとなっていたジャーギンズ・トンネル。

しかし、たった40年という短い現役期間で幕を閉じ、いまやその存在すら人々の記憶から消えようとしています。

ラナはそんなトンネルと自身を重ね合わせ、自分もいつかトンネルと同じ運命をたどるのではないかと危惧しているのが、この曲全体をとおして訴えていることかと思われます。

【Verse 2】ホテル・カルフォルニアが表すもの

ヴァース2に「ホテル・カルフォルニア」という固有名詞が登場します。

「ホテル・カルフォルニア」とは、イーグルス(Eagles)の曲名のことを指します。

【教養】イーグルスの「ホテル・カルフォルニア」とは?

イーグルスは、70年代に全盛期を迎えていたアメリカのロックバンドです。

彼らは1976年に5枚目のアルバム『ホテル・カルフォルニア』をリリース。同年度のグラミー賞最優秀レコード賞を受賞するほどの名盤を生みました。

そのアルバムの中から同名タイトル「ホテル・カルフォルニア」が、翌1977年にシングルカットされたのです。

「ホテル・カルフォルニア」は、架空のホテルを題材とした楽曲です。

この曲の歌詞はストーリー性のあるもので、次のような展開になっています。

歌詞のストーリー

舞台は、カリフォルニアにある砂漠エリアのハイウェイ。
語り手は、長時間の運転に疲れ、「ホテル・カルフォルニア」に滞在することにする。
しかし、快楽主義的かつ拝金主義的な過ごし方をしている滞在客に嫌気が差し、以前の日常生活に戻るため、ホテルを後にしようとする。
ところが、ドアに向かって走るものの、決してホテルから離れることはできなくなってしまう。

この曲の歌詞は、暗喩が多く曖昧で、あまりにも色々な解釈ができることで有名です。

さまざまな拡大解釈が飛び交う中、作詞に携わったイーグルスのヴォーカル兼ドラマーのドン・ヘンリー(Don Henley)は、次のように述べています。

It was really about the excesses of American culture and certain girls we knew. But it was also about the uneasy balance between art and commerce.

Don Henly

拙訳:歌詞の内容は、アメリカ文化の行き過ぎた部分と、特定の知り合いの女の子たちについてでした。そして、芸術と商業との間の不安定なバランスについての話でもあったんです。

(Youtubeで公式動画「Hotel California」をチェック)

ラナはこのヴァースで「ホテル・カリフォルニア」の歌詞を一部引用していますが、どういう意図があったのでしょうか?

先述のとおり、「ホテル・カリフォルニア」は大きく3つの内容だとドン・ヘンリーは述べています。

(1) アメリカ文化の行き過ぎた部分

(2) 特定の知り合いの女の子たち

(3) 芸術と商業との間の不安定なバランス

これを踏まえて、ラナの曲に話を戻すと、彼女の曲は(1)か(3)、とくに(3)のことを念頭に置いて、書かれたものではないかと思われます。

なぜなら、この曲の背景となっているジャーギンンズ・トンネルがまさにそうだからです。

商業的な目的で某オイル会社がジャーギンンズ・トンネルを造りましたが、華麗な内装へのこだわりはアートと言っても過言ではありません。

同様にラナの曲では、誰に何と言われようと自分なりの芸術性を突き詰めるのかそれとも世間から忘れられないためにも大衆受けを狙った商業的な音楽を創るのか、そのバランスで揺れ動いている心の機微をこの部分で表しているのではないかと思われます。

【Verse 3】ハリー・ニルソンの「Don’t Forget Me」について

ヴァース3には、ハリー・ニルソン(Harry Nilsson)「Don’t Forget Me(邦題:僕を忘れないで)」が登場します。

【教養】ハリー・ニルソンの「Don’t Forget Me」とは?

ハリー・ニルソン(別名義:ニルソン)は、60年代後半から70年代にかけて数多くのヒット曲を残した、アメリカのソングライターです。

代表曲は、「Everybody’s Talkin’ (うわさの男)」「Without You」「One」「I Guess the Lord Must Be in New York City(孤独のニューヨーク)」など。

彼は、1974年に10枚目のアルバム『プッシー・キャッツ』をリリース。そのアルバムの中に、「Don’t Forget Me 」が収録されています。

この曲およびアルバムのプロデューサーを務めたのが、ニルソンと交友のあったジョン・レノンです。

ハリー・ニルソンとジョン・レノンの交友ストーリー

ジョン・レノンが、ニルソンの1枚目のアルバムの出来に感動して、ニルソンに国際電話をかけて賞賛したことが交友のはじまりとされています。
ジョン・レノンはオノ・ヨーコと別居中、ニルソンと毎晩飲みに出かけるほど仲良しだったそうです。

そんな大の仲良しの2人で創ったこの曲およびアルバムは、2人の友情の証と言えるでしょう。

(Youtubeで公式動画「Don’t Forget Me」をチェック)

このヴァース3でハリー・ニルソン/「Don’t Forget Me」/ジョン・レノンという3つの言葉が使われている理由はなんでしょうか?

「Don’t Forget Me」は、ストレートに言葉の意味通り、世間から忘れられたくないという思いがあるからだと思われます。

ハリー・ニルソンジョン・レノンは、2人の気の置けない間柄を羨んでいるからではないかと思われます。

同じ業界に気の合う同士がいれば、たとえプレッシャーや不安に押しつぶされそうになっても、お互いに助け合えるからです。

ラナは2人の関係性を羨みつつ、「Don’t Forget Me」をサンプリングしたのではないかと思われます。

さいごに

いったい誰がラナ・デル・レイを忘れるというのでしょうか?

この曲に渦巻く彼女の不安は、杞憂に終わること間違いありません。

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