Lorde(ロード)「Mood Ring」皮肉たっぷりの曲【解説】

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Lorde
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なぜロードはMVでブロンドのウィッグを付けているのでしょうか。
ミュージックビデオにも歌詞にも、ロード自身が認める皮肉が込められています。
何に対する皮肉なのか、歌詞を見ながら確認してみましょう。

歌詞の解釈と英語表現

[Verse 1の解説]

【解釈】「シャボン玉を吹く」行為の心理とは?

シャボン玉を吹く行為は、ポジティブなイメージを受けます。

注目すべきは”tryna”(try to)が付いていること。吹こうと試みています。気持ちはあります。
ただtry toは試みただけで、実際にその行為をしたかどうかは定かではありません。
むしろ、実際に行わなかった可能性のほうが高い表現です。
(今回の場合、実際にはシャボン玉を吹かなかった…のかも。)

心の中はネガティブな感情が渦巻いているから、ポジティブな行動をとることで気分を変えようと試みている状況です。

アメリカの心理学者・哲学者であるウィリアム・ジェームズがこんな名言を残しています。

We don’t laugh because we’re happy – we’re happy because we laugh.
(楽しいから笑うのではない。笑うから楽しいのである。)

-William James-

この名言のようにロードは行動で内面を変えようと試みたようですが、すぐ次のラインで判明する通り、ムード変更作戦はうまくかなかったようです。

【解釈】「海」は何を指すのか?

人生はよく荒波に例えられるので、歌詞に登場する「海」も人生を表しているのではないかと推察しました。
しかしその推察だと、”ocean”に”s”が付き”all of my oceans”(私の海のすべて)と複数形になっているのがどうも気になります。人生は一人につき一つだけなので、この解釈は崩されます。

いろいろと考えた挙句、前後の流れから”emotions”(感情)と解釈しました。
色んな感情がある中、頭の中の感情はすべてが荒波状態(riptides)。
つまり、不安や恐れ、焦り、怒りといった落ち着かない感情でいっぱいの状況を「海」で表しているのではないかと思います。

その推察を裏付けるのが”riptide”。英和辞書には出てきませんでしたが、英英辞典には「コントールができないほどの強いネガティブ感情」という意味があると出てきました。

【英単語】 riptideの意味は?

「潮と潮がぶつかり合う潮衝」「激流、荒波」「コントールができないほどの強いネガティブ感情」

英和辞典に載っている意味は上の最初の2つだけですが、覚えておきたいのがもう1つの意味です。

Riptide
a strong negative feeling or force that is difficult to control:
Warnings about terror attacks sent a riptide of anxiety through the nation.

Cambridge Dictionary

[Pre-Chorusの解説]

【英単語】 sun salutationの意味は?

「太陽礼拝」

太陽に感謝と祈りを届けるヨガの一連の動作のことを、サンサルテーションと言います。

【教養】burn sageの意味とは?

「セージを焚く」

MVでロードが右手に持って燃やしているものは、ホワイトセージの葉です。ハーブの一種であるホワイトセージは焚くことで浄化作用があると言われています。

[Chorusの解釈]

【解釈】浮遊感を感じるほどのハイになるには?

ヨガをしてみたり、瞑想をしてみたり、セージを焚いてみたり、浄化を高めるためにクリスタルを清めたり、とスピリチュアル関連のことは片っ端から手を出して、感情の荒波を鎮めようとしています。

それでも、気分は落ち着きません。ハイにもなれません。なぜか。

自然が生み出す力、自然によって生み出された風に勝るものはないからです。ヨガや瞑想、マインドフルネスがここ数年話題になっていますが、「気分が優れないから世間で流行ってるヨガや瞑想でもやってみるか」ぐらいの軽いノリでやっていることは、うわっ面にすぎないです。

【英単語】mood ringの意味とは?

「付けている人の気分や体温によって色が変わるおもちゃのような指輪のこと」

余談ですが、中学生のときムード・リングが駄菓子屋に置いてあって、友だちとお揃いで買ったのを覚えています。

[Verse 2の解説] 皮肉の極み

Verse 1では、シャボン玉を吹くという行為、つまり外側からアクションを起こすことで気分を良くしようと試みていました。しかし、今度は内面から良くすることにしたようです。

観葉植物を置いて、セレブたちが取り入れている美容健康法を取り入れて、いろんなビタミンを摂取して、そしてヨガや瞑想といった東洋文化に触れられそうな、どこか東の国へ行こうかしら……と、皮肉全開です。

ヨガや瞑想は本来、自己の内面を観察しエネルギーを内側へと注いでいくような行為ですが、全く内側に向かっていません。こういうことをしても、本当の意味で心の安寧は得られません。体裁だけを整えたフェイクです。

つまり、この歌詞はそういう人たちへの皮肉です。

誤解してはいけないのは、ロードはヨガや瞑想といった行為そのものを批判しているわけではありません。ヨガや瞑想を正しく理解もしていないのに、ただやれば気分が良くなるだろうからという理由でやっている浅はかな人たちを皮肉っているのです。

“somewhere eastern”(どこか東らへん)がポイントです。そんな人たちは、ヨガや瞑想がどこで生まれたかなんて知らないし、知ろうともしていないのです。ただ自分の気分を良くしたいという理由だけでやっているわけですからね。

MVでロードが演じているのはロード自身ではありません。この歌詞に出てくるような手っ取り早く自分の気分を落ち着かせたい浅はかな人です。ロードが自分の髪をブロンドに染めたのではなく、金髪のウィグを付けているのも自分自身ではないということを暗に示しています。フェイクな物を付けて、フェイクな人たちのことを皮肉っています。

[Pre-Chorusの解説]

【教養】Pluto in Scorpio generationとは?

自分の生まれた年とその時の冥王星の位置で、どういう性格を持った世代なのかを占う占星術の一種。歌詞に出てくる冥王星蠍座は、1984年から1995年の間に生まれた人が対象です。
これまでの世界を壊し、変革をもたらして新しい道を切り開いてく世代だそうです。破壊と創造を担う世代ですね。

[Chorusの解説] 目から鱗の発想

スピリチュアルを試したけど何も感じない?気分が良くならない?

想像と破壊をもたらすのが冥王星さそり座世代だったらどうするか?

歌って踊ったらいいじゃない。

おいおい、スピリチュアルと全然関係ないじゃない。

さすが変革をもたらしてくれる世代です。そして、感情の動き(内的)ではなく、ヨガとは正反対のダンスという激しい動き(外的)で体温を上げて、ムードリングの色を変えようとする試みは、皮肉とユーモラスがほどよく効いています。

[Outroの解説] それっぽいことをそれっぽい場所で

雰囲気は大事です。
高級スパやリゾートホテルが醸し出す雰囲気は、もてなしを受ける前の段階から、その場所に一歩足を踏み入れた時点で、すでに達成感といいますか、なんだかもう十分な満足感を与えてくれます。

MVに出てくる空間も、ラグジュアリーでその場所にいるだけで気分がよくなりそうな空間です。

しかし、ロードは気づいています。疑問に思っています。
“will it be alright?”(これで大丈夫なのか?)と。

それっぽい雰囲気を味わえても、自分の悩みや抱えている問題が解決するわけではありません。

まとめ

気分を落ち着かせるためにスピリチュアル的なことをいろいろやってみるものの、全然気分は良い方向に向かいません。

それもそのはず。
やっているのは、本物ではなくフェイクで疑似スピリチュアルにすぎないからです。

ロードはMVで意識の高い白人女性を演じていますが、私たちに日本人にも当てはまる人は多いのではないでしょうか。

心と体にいいと言われているから、なんとなーくヨガや瞑想をやっている人は多いと思います。

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